Shibawithbread

氷点のShibawithbreadのネタバレレビュー・内容・結末

氷点(1966年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「他の生き物には絶対に無くて、
 人間にだけあるもの。
 それはね、
 ひめごと、というものよ。」
(太宰治『斜陽』より)

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 夏の暑い日に絞め殺された愛娘。医者の夫は友の伝手から悲しむ妻に養子の赤ん坊を用意する。自分が産んだ子供として出生届を出し、溢れんばかりの愛情を注ぐ妻。しかし、この女子の赤ん坊は娘を絞め殺した殺人犯の娘であった。
 夫は妻の不義を密かに知るところとしており、娘を殺した要因の一人である妻を苦しませるために陽子を養子にしたのだ。その事実を記した書き物を妻は見つけてしまう。これを知ったからには一層可愛がって見せなければならない、しかし、この娘は実の子を殺した男の子供。愛情と憎しみの間に思い悩む妻。
 兄は血の繋がらない妹と長じる過程で、妹に異性を見出し誰よりも何よりもかわいそうな陽子を可愛がる。そんな息子の思いと、娘の出生を知った妻は夫への復讐として二人を結婚させようとする。
 兄の友人の北原は友の家を訪ねたことを切欠に陽子に思いを寄せ、二人は仲を深めていく。しかし妻はその二人を妨げ、二人を目の前にして隠された事実をその口から詳らかにしてしまう。事実を知って暗い瞳を晒し、静かに涙を流す陽子。己の中に流れる血の罪の重さを無視することができなかった陽子は、あの日殺人があった河原の雪の上で己を殺そうとする。
 なんとか一命をとりとめた陽子、彼女を囲む人間たちと明かされた本当の真実。あらぬ罪と本当の罪。いずれにしても罪の意識に苛まれる運命であった陽子の息は確かに深まった。一度途切れた新しい息は、別の人生の始まりの風となる。


・津川雅彦さんかっこいい。初め誰かと思ったけど、声が変わらない
 鷲鼻の横顔が美しい。生え際の計算されたかのような比率。しかし、ニット帽が死ぬほど似合っていない。
・雪の杉林の一本道がモノクロの素晴らしさを魅せてる
・殺人者の娘、姦通の結果

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 神ではない、写し身、似姿としての存在である人間たちの罪と赦し。