もっちゃん

12モンキーズのもっちゃんのレビュー・感想・評価

12モンキーズ(1995年製作の映画)
4.3
幾重にも張り巡らされた伏線。オマージュ。重層的なストーリー構成がタイムスリップSF作品としてはかなりよくできている。細菌兵器、退廃した未来からの来訪者といった構成要素はありきたりかもしれないが、もしかしたら世に溢れるSFの多くが今作にインスピレーションを得たというのもあるのではなかろうか。

2035年の未来では人類は凶悪な細菌によって地下での生活を余儀なくされている。そんな現状を打破するべく細菌がばらまかれた1996年にタイムスリップする使命を負わされたのがジェームズ(ブルース・ウィリス)である。

ジェームズはタイムスリップされた先で未来の世界にはないものに強い愛着を感じ、過去にとらわれる。首に埋め込まれたチップ、歯に取り付けられた探知機、どこからともなく聞こえる声、気味の悪い科学者たちはテリー・ギリアム監督のテーマでもある監視社会とディストピアの具現化である。
動物虐待だとか、産業のオートマティック化、消費社会の到来といったものを作品のテーマに取り入れるあたり、一貫してギリアム監督の社会風刺のモチーフである。

今作はさらにサスペンス要素を強く意識していることは言うまでもない。ヒッチコックの「めまい」や「鳥」を露骨に作中に取り入れ(作品の構造的には「北北西に進路をとれ」のほうがあっているが)、リスペクトを感じる。
さらに多用されるカメラを斜めに傾けたカット。斜め取りの撮影法によって、観客に「不安定さ」を意識させ、宙ぶらりん感(サスペンス)を強要する。

そしてエンドロールの”What a Wonderful World"。未来と対比したときの過去への賛歌のようにも聞こえるが、私はむしろ過去と対比したときの未来への最大の皮肉だと解釈した。ギリアム監督ならそんな下心が隠れているのではないかと。