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12モンキーズのもるがなのレビュー・感想・評価

12モンキーズ(1995年製作の映画)
4.2
人類の99%が滅亡した2035年の絶望の未来。人権を剥奪された囚人ブルース・ウィリスが、人類滅亡の引き金を引いた12モンキーズという謎の集団を探るために、1990年へと送り込まれる!

説明をすっ飛ばして前のめりに進んでいく物語に最初は違和感を覚えるだろうが、次第にそのテリー・ギリアム流の悪夢的世界観にのめり込んでいく。不穏なテーマ曲に乗せて狂暴化していくブルース・ウィリスに、頭が完全にイカれてしまったブラッド・ピットの鬼気迫る演技が本作の最大の見所であり、登場人物の大半が狂人であるため、肝心のタイムトラベルすらも足元の覚束ない不安さが残るのだ。狂人の妄想という域をなかなか出ないのが面白い。

散りばめた伏線も素晴らしく、序盤の予測のつかない展開に反して、中盤から後半にかけては驚くほど論理的に回収に走っており、当人すらも信じ切れていなかったタイムトラベルが徐々に現実化していく過程はゾッとしてしまった。もはや何を信じていいかわからない。

過去と未来が何度も交錯し、登場人物すらも自身の精神状態を疑っているので、一見するとかなり難解な作品である。しかしその実、時系列はストレートな一本道であり、多少の揺らぎがあっても特異点となった物事や人物は入れ替えられつつ、既定路線の未来へとひた走る。解決が軸となりがちなタイムトラベルものにおいて、これはかなりの異色作であり、一度見たら決して忘れることのできない作品であるといえよう。
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