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民族の祭典のNeCoのレビュー・感想・評価

民族の祭典(1938年製作の映画)
3.1
プロパガンダの一種であっても尚美しさを失わない作品

聖火を繋ぐシーン、本来はこういうものだよなと
自然の中をその身ひとつで肉体美を輝かせながらひた走る
その熱意を、生命の流動を、繋ぐ
現代の形骸化されたそれではなく、純粋な聖火の意義を感じる、その荘厳さたるや、目を奪われる
冒頭のギリシャ彫刻の描写も、スローモーション技法も肉体美の表現に非常に力を入れていることが窺えた

国力の掲示が目的であったとしても、そこに政治的策略がふんだんに散りばめられていたとしても、国交を試みたという点では評価されるべきだし、確かに文明的かつ希望の象徴のような力強さはある
繰り返された熱狂ではなく、今この瞬間に新しく革新的なものを切り拓きつつ享受していた彼らの興奮を少なからず感じることができた

三国同盟からの配慮で日本の存在が映像に残っていることは自明であったが、いざ目にすると感慨深いものはある
ヒトラー自身は日本に対してあまり良いとは言えない見解を持ち合わせており、映像を手掛けたのは『意志の勝利』で有名なレニであったことから、政治的要素が過分に混入する可能性に不安があったが、公式映像にその要素を盛り込まなかったのは評価すべき点だと思う
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