矢吹健を称える会

四畳半物語 娼婦しのの矢吹健を称える会のレビュー・感想・評価

四畳半物語 娼婦しの(1966年製作の映画)
4.0
 ほとんどのシーンがワンシーンワンカットで、しかもその見せ方もまあ、凝りに凝っている。野川由美子が水揚げされるシーンなんか、三田佳子がいる居間からカメラが横移動すると、離れた部屋の低い窓が開いていて野川由美子が泣いていて、彼女を水揚げした男が奇声を発したので様子を確かめると男は死んでいる。ここでまたカメラが横移動して、その部屋の戸の前に来ると、野川がその戸を跳ね飛ばして表へ、そのまま井戸に飛び込もうとするので、慌てて三田・木暮実千代らがそれを止めて、さらに男の死を知った木暮が医者を呼んでこいと車夫に言いつけて……なんて一連の行動を、ずーっとワンカットで映し続けるのである。この画面のスリルが、物語のしょうもなさを余裕で吹きとばしている。
 とりわけ目を瞠ったのが、三田と田村高廣が、塀の外に出ていって会話をするシーンで、これは本当によく練られた、圧巻のワンシーンワンカットと思う。

 また、スクリーン外の音による演出も面白い。重要なモチーフである鴇の声はもちろん、野川を水揚げした男の妻が置屋にやってくるシーンで、「夫が死んだときに一緒にいた女を連れてこい」「もういない」という問答をしている最中、野川の妙に元気な歌声がずーっと画面外で聞こえているなんて本当に可笑しい。
 あと、やっぱり野川由美子ってめちゃくちゃ良い。露口茂も震えるほど素晴らしい。