◆あらすじ◆
敬虔なキリスト教徒で裕福な父テーレ、母マレタに育てられた一人娘のカーリンは教会へ向かう途中、ヤギの世話をする貧しい3兄弟に出会う。カーリンは3人に食事をふるまうも、長兄と次兄は彼女を強姦して殺してしまう。その後、3兄弟はテーレの家に宿を求めて訪れるのだが...。
◆感想◆
一人娘を奪われた父親の復讐劇とその敬虔さから神への慈悲を願う姿が描かれた作品となっており、まだ幼く、純真無垢な少女が犠牲になるというショッキングな内容とともに、大切な一人娘を奪われた両親の悲しみや憤りから信仰心を越えて復讐へ駆り立てられる姿が印象的でした。
カーリンは両親に溺愛されており、必要以上に大事に育てられていて、何事にも疑いを持たない性格で、良く言えば純真無垢、悪く言えば世間知らずな面を持っていました。テーレもマレタが過保護過ぎて、カーリンにあまり好感が持てず、わがままさが鼻につきました。テーレの家で召使として使われている女性のインゲリも苦労知らずのカーリンを妬んでいて、嫌がらせをする姿は醜いながら人間らしさを感じました。
カーリンがヤギ使いの3兄弟に会って、何の警戒もせずに食事をふるまう姿はあまりにも迂闊だったと言わざるを得ません。インゲリが付き添っていたのですが、3兄弟に出会う前にカーリンから離れたことも運が悪かったです。もちろん襲った長兄と次兄が悪いことは間違いないです。カーリンが襲われるシーンはとても不快で長兄と次兄の醜さが前面に出ていました。
その後、3兄弟は何事もなかったかのようにテーレの家に訪れ、一夜の宿を借ります。この3兄弟も迂闊で、カーリンが襲われたことをテーレたちが気づく展開はかなり間抜けな感じを受けました。
本作の印象的な部分として、キリスト教だけでなく異教の神の存在をほのめかしていて、イングレがオーディンにカーリンの不幸を祈るシーンがあって、イングレはカーリンが襲われた後、罪の意識に苛まれます。一方、キリスト教信者であるテーレたちはカーリンの死に絶望しながらも、神への信仰を失っていない部分が強く描かれていて、どこまでもキリスト教を心の依り代にしていることが分かるシーンだったと思います。
ラストはキリスト教に詳しくないので意味は分かりませんが、どこか神の御業と言える状況だったように感じました。
深い部分があるようで私には分からず、その点で本作を理解しきれていないと思いますが、最後まで興味深く観ることができました。
鑑賞日:2025年9月2日
鑑賞方法:Amazon Prime Video