emily

ロゼッタのemilyのレビュー・感想・評価

ロゼッタ(1999年製作の映画)
4.3
酒浸りの母とキャンプ場のトレーラーで暮らすロゼッタ。突如勤めてた工場を解雇され窮地に追い込まれる。古着を売るが大したお金にはならず、なかなか仕事が見つからないなか謎の腹痛を抱えている。ワッフル店でリケと出会い、仕事を手に入れるが、また解雇され。。

手持ちカメラがぴったり寄り添い、息遣いまで聞こえる、リアルを追求した 緊迫感のあるカメラワークが、隙間なくロゼッタの世界を映し出す。彼女から見る母親の姿。わずかなお酒と食事のため男を家に招く、どうしようもない母。しかしロゼッタが頑張るモチベーションで、守るために断固とした態度で現実に立ち向かう。弱音は吐かない、誰にも頼らない。張り詰めた糸は苦しく観客にもしっかり乗りかかってくる。

生きるためにはたべなくてはいけない。食べるためにはお金がいる。だから仕事を探す。その目標は一瞬も揺るがない。自分と対話し認識し、この道しかないことを自分に言い聞かせる。まっとうな生活だけが自分を救う。自分の中の疑念を消し去り、その道だけを信じることで、自分を保つ。細い細いか細い糸。心の苦しみは腹痛に現れ、激しく行き交う車に飛び込み横断する姿に心理と交差する。

強い信念のためには邪魔者は排除する。歪んだ正義感は加速し、身近な人を陥れ、目標達成だけの一本道しか彼女にはない。不器用で、率直で、どこまでもピュア。つい声をかけてしまいたくなる。つい抱きしめたくなる。頑張らなくていいんだよ。辛い時は頼っていいんだよ。と。。届かない声は観客もには跳ね返ってくる。ロゼッタは私であなたで、やさしくやさしく観客の心に響き渡る。
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