東京キネマ

ザッツ・エンタテインメントの東京キネマのレビュー・感想・評価

5.0
その昔、異常にミュージカル好きのテレビ業界のおっさんが居て、ハリウッドのパーティには必ず自分の好きなミュージカルのシーンを繋いだフィルムを持ってくる。それも、顔も見えないステップの画に違う曲で編集して、「さあ誰でしょう?」なんてクイズをやったりして遊んでいたのですが、これがやたらと良く出来ている。 これ、遊んでるだけじゃ勿体ないなあ、なんてことで誰がナシを付けたのか分りませんが、このフィルムをテレビ用の特番として企画しました。

当時、経営悪化で合理化真っ最中のMGMの担当者が試写にきてビックリ。これはテレビ番組なんかじゃ勿体ない、映画にするぞ!ってことになる。その当時、ビデオやレーザー・ディスクで旧作の再販がブーム。こりゃ作品カタログにもなるし、考えてみたら創立50周年じゃん、ってことで、渡りに船とばかりに作った映画が本作であります。

このおっさん、ジャック・ヘイリー・JRと言いまして、お父さんが有名なボードビリアンのジャック・ヘイリー。有名なところは『オズの魔法使い』のブリキ男です。このブリキのメイクですが、錫を使ってたもんで、気管支傷害にはなるわ失明の危機になるわで大変だったのであります。その後、自慢のテノールもダメになったようで、『オズの魔法使い』は彼の父にとって命をかけたような作品だったという訳です。

さて、おっさんはというと、この映画にかこつけたのかどうか知りませんが、ライザ・ミネリと急接近。ライザ・ミネリといえばお母さんがジュディ・ガーランド、お父さんはミュージカル映画の大監督ヴィンセント・ミネリですから、このおっさんにとっては伝説の人のご息女。あなたのご両親はどれだけ凄い人たちか、なんてことを言いながら必死に口説いたんでしょうねえ。この作品の年に二人は結婚しております。伝説の映画の共演者同士の子供が結婚。いい話じゃないですか。

さて本作ですが、どこが良いか、どこが悪いかなんて話は無粋であります。とにかく、感じて下さいませ。見事な編集です。本当にMGMのミュージカルが好きな人が作ったんだなあ、というのが伝わってきますから。

以下は、私の好きなシーンのベスト10。(決して好きな映画ということではありません)

1)“ビギン・ザ・ビギン”(『踊るニューヨーク』1940年)
フレッド•アステア&エリノア・パウエル。ため息しか出ません。背筋がゾクゾクするくらい素晴らしいです。若い時に見ていたら、きっと人生が狂っていたでしょうね。

2)“The Babbitt and the Bromide”(『ジーグフェルド・フォリーズ』1946年)
技のアステアと力のジーン・ケリーのダンスが好対照です。この時アステア47歳。いやはや信じられません。

3)“ディア・ミスター・ゲイブル”(『踊る不夜城』1937年)
アル・ジョルスンの名曲“You Made Me Love You”を改詞したジュディ・ガーランドのグルーピー・ソング。ゲーブルの名シーンの編集が秀逸です。

4)“誰にも奪えぬこの想い”(『ブロードウェイのバークレイ夫妻』1949年)
アステア&ロジャース。ジンジャー・ロジャースの顔の表情! なんて色っぽいんでしょう。

5)“Dancing in the Dark”(『バンド・ワゴン』1953年)
アステア&チャリシーのシックなダンスが見事です。注目はチャリシーのスカートのはらい、それにアステアの馬車乗りのポーズ。カッコいい!

6)“Cotton Blossom”(『ショウ・ボート』1951年)
何度見ても、ショウ・ボートが接岸するシーンで涙が出てくるのです。この感覚は何なんでしょうか。

7)“Gigi”~“Thank Heaven”(『恋の手ほどき』1958年)
ルイ・ジュールダンの声がいいです。それにモーリス・シュバリエのこの雰囲気。とろけそうです。

8)“Andy Hardy”(1937年~)
ジュディ・ガーランドの可愛さ、それとミッキー•ルーニーのハチャメチャなダンスが光ってます。編集もうまいですね。

9)“雨に唱えば”(『雨に唱えば』1952年)
ジーン・ケリーと言えば、やっぱりこれですよね。セットの仕掛け、ダンスの構成が素晴らしいです。

10)“雨に唱えば”(『リトルネリーケリー』1940年)
こちらはジュディ・ガーランドの方です。このスイング感。栴檀は双葉よりなんとかと言いますが、まさしくこれ見たら天才少女ですね。


番外としては、MGM25周年パーティの記念映像でしょうか。注目はバスター・キートンです。結構笑えますよ。