kaomatsu

模倣の人生のkaomatsuのレビュー・感想・評価

模倣の人生(1934年製作の映画)
4.5
映画史上、個人的に最も素敵だと思う女優の一人、クローデット・コルベール。1934年、スクリューボール・コメディの最高傑作『或る夜の出来事』でアカデミー主演女優賞を獲得し、続けて『クレオパトラ』『模倣の人生』と、同年に計3作もの名作に主演した、伝説の名女優だ。この3作の中で、おそらく最も地味で、知名度も低いのがこの『模倣の人生』。しかしその内容は、女性が社会進出することの困難さと、黒人のメイドとその娘を軸にした人種問題、同じ男性に想いを寄せる母娘の確執など、当時としては奇跡的なほど複雑なプロットをもち、上流階級の白人ばかりが活躍するトーキー黎明期のハリウッドにおいて、きわめて異彩を放っている。その、終始落ち着いた演出が絶妙で、静かな中にも見ごたえのある、秀逸な人間ドラマとなっている。クローデット・コルベールの演技は、『或る夜~』のような向こうっ気の強いコメディエンヌとも、『クレオパトラ』の威風堂々とした美しい佇まいとも異なる、当時の良識ある等身大の女性を体現したもので、その抑制された演技は本当に素晴らしい。

1939年の『風と共に去りぬ』にも、黒人のメイドさんが出てきたけれど、それより5年前に製作されたこの作品で、黒人への風当たりや社会的不平等にメスを入れていることに驚く。ちなみにリメイクとなる、1959年のダグラス・サーク監督『悲しみは空の彼方に』は未見だが、こちらも名作の誉れ高いだけに、是非チェックしたい。

VHSビデオの販売のみで、しかも廃盤だった10年ほど前、何とか入手して観ることができたが、現在はDVD化されているのかな? 内容を思い出して書いているうちに、また観たくなってきた。
kaomatsu

kaomatsu