ウェルテル効果に着目したのは面白いと思うが、あまりにも若者が愚かに描かれていて、フィクションとはいえ作品を視聴する上で看過できない点だと感じた。
制作された時期や登場人物から察するに、X JAPANのHIDEの自殺を受け、彼を追うように自殺した若者たちから着想得たのだろう。そんな今作では、後追い自殺を選んだ彼らを、「現代の若者は、自分の好きなミュージシャンが自殺したくらいで、尊い命まで絶ってしまう」という考えを持った「大人な」製作陣の思想が透けて見えてしまう。それゆえ、こういった若者の自殺に真摯に向き合わず、若者を「理解できない者」として逆に突き放したような内容となっている。
「そもそもそういったものを扱った作品でない」と言ってしまえばそこまでかもしれないが、後追い自殺という普通に生きていれば理解できない感覚を、あえて取り扱った作品だけに、話もまとまりがつかずとっ散らかったうえ、若者を軽視しているような内容や演出となってしまったことが、とても残念であり気持ちの良いものではなかった。
個人的に、今作や「キュア」、「アナザヘヴン」を含めたこの時代独特の映像の雰囲気はとても好きである。