優しいアロエ

自殺サークルの優しいアロエのレビュー・感想・評価

自殺サークル(2002年製作の映画)
4.0
「あなたはあなたと関係がありますか?」

 顔の死んだ現代人とは裏腹に、自殺する人たちはみな笑顔。死んだほうがハッピーなんじゃないのという問いかけか。それとも心と表情が一致しない現代人のメタファーか。「みんなで飛べば怖くない」的な同調性が狂気を行動へと変貌させる。

 私たちの生きる日本と地続きな物語でありながら、次第にフィクショナルで虚構じみた展開になっていくところが園子温らしくて実にいい。純粋にエンタメ性に富んだものになっているし、ある意味で内容の深刻さを和らいでいるともとれる。そのフィクショナル要素の最たる例が、真理を語るロールとして無垢性の象徴たる子どもたちを配置したことだろう。彼らは神の使役者のようでもあり、『AKIRA』のナンバーズたちを彷彿とさせた。

 その一方、対位法のしつこさやカットのつなぎ方の粗さが目立った印象もあるにはある。しかし、未熟さは言い換えれば若さであり、「若者から見た異常な日本」というイメージをいっそう焼き付ける。また、「カルト集団」「冷めきった家族」といったモチーフが作家性の片鱗を感じさせてもくれ、園子温の入りとして観る価値のある作品だった。
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