垂直落下式サミング

ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

5.0
南海の孤島を舞台にした冒険ロマンアドベンチャー。
本作で登場する悪の秘密結社「赤い竹」は、ナチスドイツや戦時中の日本帝国軍のようなファシズム国家、あるいは007シリーズの「スペクター」がモデルだろうが、白い軍服の衣装がかなり格好いい。暴力を好まないインファント島民を無理矢理拐ってきて奴隷化し、島での労働力にしている超悪い奴らなのである。
見所は、怪獣たちのユーモラスな描写。ゴジラがみせるエビラとの大岩の投げ合いや、キングコングへのオマージュである大コンドルから美女を守る場面の緩急、戦闘機をディスコ・ミュージックにのせて撃墜するなど、かなりコミカル色が強い作品であり、世間的には『ウルトラQ』が放送開始した怪獣ブームのど真ん中で、大衆の圧倒的な支持と技術的にも円熟期に入った東宝特撮の余裕を感じさせる。
そして、水野久美や宝田明など、東宝特撮では馴染みの顔となった俳優陣も、明るくユニークなキャラクターたちをのびのびと演じていて気持ちがいい。
最もみるべきは、荒れ狂う波のなかでエビラの大ハサミが漂流するヨットを捕らえる場面の迫真の特撮だ。かなり巨大なミニチュアセットを用いて撮影し、それをさらにスクリーンプロセスでより大きく見えるよう合成して、波や水飛沫をいれてスケール感を演出している。
悪の組織の秘密基地に自爆スイッチがあるのはお約束の展開。なぜだか赤い竹の軍事施設だけでなく、島全体を海に沈め地図から消滅させるほどの威力がある。プッツンしてるぜ!カウントダウンが爆発を告げる前に脱出できるのかリアルタイム進行の手法で描かれ、ここがタイムリミットサスペンスとして手に汗握る演出となっており、今観てもなかなか見ごたえのある作品である。