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お引越しのオノタクのレビュー・感想・評価

お引越し(1993年製作の映画)
4.3
課題 2

田畑智子のデビュー作。当時12歳だったにもかかわらず、彼女の演技力が凄まじいのは相米慎二の執拗なリハーサルと演出の成果か。

主人公のレンコが両親の仲違いにいまいちピンと来ておらず、元気溌溂で自由奔放な姿を見せていても不安と恐怖心はしっかりと抱えているのが伝わってきた。

この映画では異常なまでの長回しは見られなかったものの、やはりワンカットが長かったのは間違いない。ただそれを感じさせない、動きと中心構造を意識したカメラワークと演技のおかげで、違和感は全くなかった。

セリフや演技、小道具へのこだわりもあったのだろうか、展開や心情を予測させるシーンが多々見られた。逆三角形に撮られたテーブル、雨、標準語の少女、夫の部屋を見つめ閉じる母、家族写真を燃やそうとする父と拒否するレンコ、ぬいぐるみを欲しがる父、友人カップルの妊娠、要所で入り込んでくる森のカット。

これらのシーンは、両親とレンコの不安や未練、レンコの成長と父親との決別を現していたのか。

森のカットはレンコの変化を表していたのではないか。ラスト、レンコは森を超え幸せだった頃の記憶と対峙し、その思い出を祝福しながらも決別することで大人へと成長したと言える。この森が、レンコが大人へなるキーだったので要所で入る森のカットが変化を現してると言えるだろう。

また、序盤では家族写真が燃やされるのを拒否していたが、ラストでは家族の幸せだった記憶を祝福して燃やしたという対比も、彼女の成長を象徴している。そして2度ある電車のシーンでも、1度目は母親にお菓子をあげなかったのに対し、ラストシーンではわけあって食べてるように、大人と対等の関係になれたことを表している。

ストーリーと連動する、散りばめられたメタファーが、この映画の主題をよりわかりやすくしていた。

大人の都合で子供だと見放され、言ってしまえば「孤児」の状態だった少女が、両親以外の社会的繋がりと自分の力で大人の階段を登る物語だったと自分は思う。
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