イチロヲ

独裁者のイチロヲのレビュー・感想・評価

独裁者(1940年製作の映画)
4.5
ヨーロッパ各地に進軍する独裁者ヒンケルがユダヤ人迫害行為を開始するのだが、ヒンケルと外見が瓜二つのユダヤ人男性が現れたことにより事態が急変してしまう。架空国による独裁体制を描くことにより、反戦主義・平和主義を説いている喜劇映画。チャップリンが一人二役で台詞演技をしている。

本作はナチス党のヒトラーが強大な独裁者になる直前に製作されたもの。これから本格的に参戦することになるアメリカ軍部にとっては、とても都合が悪い内容になっているため、公開後にチャップリンはハリウッド追放の危機に立たされてしまう。

作品としては、全体的にイギリス人ならではブラック・ジョークが色濃く、アメリカ映画だけども、アメリカ映画らしさが感じられない。「How to Become a Dictator(独裁者になる方法)」を痛烈に皮肉っており、独裁者は有能な側近の傀儡であることを逆手に取った演出がとにかく面白い。だが、主人公のユダヤ人とヒンケルがそっくりだということを誰も言及しないのは、些か違和感がある。

ラストのカメラ目線での演説はチャップリンの素の言葉。非常に感動的ではあるのだが、平和主義と理想主義は密接に繋がり合っているため、現実にするのはとても難しい。実際の世界では、本作の公開後に世界大戦へと突入。落胆したチャップリンは、次作の「殺人狂時代」で反骨精神を誇示している。