ぺがちゅう

独裁者のぺがちゅうのレビュー・感想・評価

独裁者(1940年製作の映画)
3.8
チャップリンの作品としても、40年代のコメディとしても初鑑賞だったので、色々と新鮮に感じられた。本作では、チャップリンは一人二役を担っており、床屋と独裁者ヒンケルを演じる。床屋の軸では、僅かに恋愛も描かれる。

WWⅠを描いた序盤は単純に笑えた。大砲が全然飛ばずにポトリと落っこちるくだりとか、フラフラのシュルツと一緒に飛行機で祖国に戻るくだりとか。

その後独裁者ヒンケルが出てくる。演説の様子は面白かったが(咳き込むのが印象的)、身ぶり手振りや話し方が、なかなかどうしてヒットラーに劣らぬ仕上がりで、感心させられた。コミカルな行動をしないで真剣にやれば、ヒットラーの演説をかなり正確にトレースできるのではないだろうか。

細かいところでは、ナチスのゲッベルスにあたる人物がガービッジ(ゴミ)という名前だったことや、ゲーリングにあたる軍人とのやりとり(ドジをしてヒンケルに怒られる)が面白かった。

最後に書くべきなのは、何といっても、ラストの演説だろう。収容所をシュルツと共に脱走した後、ヒンケルに間違えられた床屋は、状況的に仕方なく演説をする。ここにチャップリンの主張が込められているのだろう。演説では、相互扶助、民主主義、自由主義、愛、人間讃歌が語られる。演説後に、愛するハンナに優しく語りかけるシーンも感動的な仕上がりである。
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