KANA

独裁者のKANAのレビュー・感想・評価

独裁者(1940年製作の映画)
4.0

反ナチ映画の金字塔であり、チャップリン初の完全トーキー。
ラスト以外の記憶が薄れてたので再鑑賞。
独裁者ヒトラーを徹底的にからかった本作の製作は、ナチス政権の最盛期である1940年!
まさに命がけで撮影したその根性、スゴイ!

チャップリンが独裁者ヒンケルとユダヤ人の床屋チャーリーの二役をコミカルに演じ、瓜二つの二人のすり替えという古典的なギャグで笑わせながら、両者の対比によってヒンケルの狂気を鋭く暴く。

トメニア国の繁栄と、反民主主義、反ユダヤ人を独自の言語で唱え上げるヒトラーの演説パロディーの熱演ぶりからしてブラックユーモア。(ラストとの対比に繋がる)

ヒンケルが地球儀の風船をもてあそぶ長回しシーンは、一見可愛いようだけどヒトラーの強欲さや幼稚さを強調してる気もして、不気味というか気色悪いというか…

また、床屋のチャーリーがブラームスの舞曲にピッタリ合わせてお客さんの髭剃りをするシーンはさすが名人芸という感じで可笑しいし楽しい。
帽子をポンっと頭に乗せて仕上げるまでパーフェクト♪

そしてヒトラーだけでなく、ムッソリーニもチャップリンの標的に。
近隣のバクテリア国の指導者ナパロニなる人物に見立てたムッソリーニをジャック・オーキーがこれまた命がけで演じててお見事!
支配欲にまみれた二人が隣国オーストリッチ侵略を巡って交渉するシーンが凄まじく滑稽。
お互いを皮肉り合いながら段々白熱していって喧嘩モードになると、豪華料理も使ったりしてもはやギャグの応戦。笑

…その他にも、劇中あらゆるところに笑いがビッシリ散りばめられてる。
それがラストは一転、ある時点でヒンケルに間違えられたままのチャーリーが行う6分間の演説によって現実を直視させる。

ファシズムの悪をストレートに叫び、
全人類の平和を切望し、
自由の素晴らしさを高らかに訴える…

この、一庶民であるチャーリーの即興演説があまりにも美しくて尊い。
純粋な心の持ち主だからなおさらグッとくる…
笑わせるだけ笑わせてラストはピリッと締めるチャップリン。

ヒトラーはいち早くこの映画の存在を知り、少なくとも3回は観たそう!
ボケまくりの笑いで痛烈に自分を批判したこの作品を、一体どんな顔してそんなに何回も観たんだろう…
KANA

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