ふうま

独裁者のふうまのレビュー・感想・評価

独裁者(1940年製作の映画)
4.3
チャップリン映画は二作目。街の灯を一作目に見てチャップリンの凄さに本当に驚いた。街の灯は自分の中でオールタイムベスト3に入っている。他のチャップリン映画も気になっていたが、中々見れずやっと何本か見れるようになったので有名な独裁者から選んだ。
有名ゆえ大まかなあらすじと超有名な演説がラストにあるぐらいで内容は知らずにみた。先に良くなかったと思った点は、やはりトーキー映画ということ。トーキーゆえに、説明的な所が多かった、少し長々しいと感じました。街の灯の時はスラップスティックの中でストーリーを進ませていき、そのスラップスティックと演技、少しの字幕で物語を進めていたので、ものすごく綺麗に纏まっていて、かつ無駄がなくテンポ良く没入感が凄まじかった。それと比較すると、やはりコメディシーンは感情などを表してはいたが、本筋とは独立しており間延びしていると感じた。
しかし、そのコメディシーンは独裁者の方が面白かったと思う。ここは逆に、トーキー故に笑いの幅がものすごく広くなった所が多かったし、何より普通に笑ってしまう所が多かった。ブラームスの音楽に合わせて髭を剃るシーンやデートの前にハゲ頭をピカピカにして鏡替わりにする所は物凄く好き。大勢の人が出てきてのスラップスティックなんて、これどんだけ練習したんだと思うぐらい全員の動きが完璧。あそこは笑うというより凄すぎて溜息が出る。
例の演説シーンだけど、正直今までみた映画とは次元が違う圧力を感じる。このシーンだけで5点にしてもいいと思える。チャップリンの演技力は当然物凄いし、床屋のひょうきんな演技とか最高なんだけど、あえてあのシーンはそれを捨てて素で喋っている。もはや、チャールズチャップリンの演説。映画を見ている自分に熱く訴えかけてもいるし、苦しんでいる人を励ましてもいるし、独裁者、支配者への強烈な怒りも感じる。演説の内容はあの時代の戦争に対する批判を超えて、全ての人の幸せを訴える内容だと思う。現代でも通用するし、全ての人間が心の内に留めるべき言葉じゃないかと思った。個人的には"世界には全人類を養える富がある"という言葉がすごく残った。時代背景を知ると尚更あのシーンへの思いや覚悟の凄さを知る。
この映画がホロコースト前の、アメリカが参戦する前の映画だというのが凄過ぎる。先見の明だろう。もはや、チャップリンは映画人を超えて偉人なんだという証拠を感じました。
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