垂直落下式サミング

ジャッカス・ザ・ムービー 日本特別版の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

4.0
どうしようもない糞映画。以前ダチョウ倶楽部with出川哲朗でおくる『リアクションの殿堂』という糞DVDをみたが、『ジャッカス』はそれより雑だし命知らずで、たまに笑えない。これを比べてみると、日本のお笑いは見る人のことを考えて丁寧に作られていることがわかる。
松本人志は「ツッコミとは説明である」と言ったが、ダチョウ倶楽部や出川哲朗が得意とするリアクション芸はそれをセルフで行っている。彼等の場合それは主に、熱い、痛い、怖い、溺れる、殺す気か、生意気だぞ、など大方はパターン化されており、その体を張ったエクストリームなパフォーマンスの後に当人の口から単略化された状況説明がなされることで、観客は安心して笑うことができる。やっていることだけをみれば過激で下劣なことをしているのに、実は客にみせる芸としてオーソドックスな演芸の構造を守っているのだ。
一方で、ジャッカスのメンバーはリアクションを外側に求める。何やってるんだ、いい加減にしろ、ふざけるな、バカなんじゃないか、死んじまえクソ野郎、などという罵詈雑言をその身で受け止めたいのだ。そのためには、相手に迷惑をかけ不快な気持ちにさせることが必然的に一番手っ取り早い手段であり、それは時として観客すらも敵に回すということになりかねないのである。相手が無反応だったらとりあえず試しに殴ってみようかという俗悪さ。雑なんだよ色々。本当にろくでもない。
「良識ある人間ならさすがにここまではしないだろう」というラインを平気で踏み越えてくる奴等が突き付ける抜き身の本能に戦慄をおぼえた。悪夢のような傑作。