このレビューはネタバレを含みます
IQ169の天才詐欺師スティーヴン・ラッセルを描いた作品。
実の母親に会う為に、警察官になるも拒絶されてしまったり。
妻子がいるにも関わらず、大事故をキッカケにゲイをカミングアウトしたり。
冒頭から目まぐるしい展開に圧倒されるが、全100分という短さもあって、全体的にテンポ良く進んでいくので飽きずに楽しめた。
流石に終盤は失速するかと思いきや、ラストにどんでん返しも用意されていて、最後まで目が離せない。
主人公ラッセルを演じるのは、ジム・キャリー。
コメディー一辺倒ではなく、シリアスな芝居もこなせる様になったキャリア後期の作品で、ふざけ過ぎず、真面目過ぎずのバランスが良かった。
本人が出演を熱望したと聞くが、それも頷ける出来。
当時の彼にしか演じられない役柄で、キャリアの集大成と言っても過言ではないだろう。
物語的には、恋人の為に詐欺や脱獄を繰り返す、主人公の姿が描かれる。
その手口があまりにも大胆かつ突飛なので、真偽を疑いたくもなるが、実話ベースというからには本当にあったという事か。
元々IQ169の天才だった事に加え、警察官時代には犯罪や法律の知識を手に入れ、隠れゲイとして生きてきた経験上、嘘をつく事にも慣れていた。
…そうした素養が、彼を天才詐欺師にたらしめていたのかもしれない。
いくら恋人の為、ゲイライフに金が掛かると言っても、あそこまで金が必要なのかは疑問が残る。
特に恋人が浪費家なわけでもないし、恋人自身も「金は要らない」と発言しているわけで。
そう考えると、主人公は自分の中にある欠落を埋める為に詐欺を繰り返していた様にも思えてくる。
実の母親に捨てられ、拒絶された過去を考えれば、母親の不在という欠落を埋めたかったのか。
もしくは、愛する恋人に母親の様に捨てられてしまうかもしれない…という不安が、彼を暴走させたのだろうか。
正直、犯罪は犯罪なので、愛の為と美化されても困るのだが、とはいえ、これだけ詐欺や脱獄を繰り返す犯罪者も珍しいわけで、ここまで来ると根負けして彼の愛も認めざるを得ない。
結果的に懲役167年で恋人と会えなくなってしまったのは皮肉だが、IQ169の頭脳を持ってしても、「恋人を幸せに暮らす」という事が出来ないのだから、人間とは不思議なものである。