一

乱の一のレビュー・感想・評価

(1985年製作の映画)
4.0
黒澤明監督作品

シェイクスピアの悲劇「リア王」をベースに毛利元就の「3本の矢」の故事などを取り入れながら、裏切りと憎しみの中で殺し合う人々の姿を壮大なスケールで活写した戦国時代劇

カラーの黒澤作品は初鑑賞ですが、まずは本作からと心に決めていました
そして三船敏郎不在の黒澤作品も初鑑賞

凄すぎる
印象に残るシーンがあまりにも多い
一体何なんだこのスケールのデカさは
美しく広大な自然というロケーションの中で繰り広げられる、醜い人間というか肉親同士の争い
それはもう地獄絵図のような光景にはなりますが、やはり黒澤作品は底抜けに美しい構図がある
カラーになり、より一層映える様々な衣装のコントラストや城の大炎上、赤みがかったラストシーンなんか震えるほど素晴らしかった

いつものような娯楽性はほとんどなく、3時間近くあるのでやや冗長である事は否めないのですが、芸術性に特化しているので面白いか面白くないかというのは一旦置いておいて、凄い映画であることは恐らく誰が観てもわかる
特に戦闘シーンの迫力は凄まじいものがあり、矢が飛び交う中で落馬する者だらけだったりと、落馬後に後続の馬に踏みつけられて本当に死んでしまわないかと心配になるほど

美術 衣装のクオリティもさることながら、圧倒的な物量の多さや邦画では考えられないくらいのエキストラの数を観れば、何をどうしたってこれが“映画”だと感動せずにはいられない
これはぜひとも大きなスクリーンで観直したい

何より黒澤作品においての三船敏郎の不在はかなりの不安要素ではありましたが、仲代達矢の存在がそんな懸念を一瞬で吹っ飛ばしてくれました
もはや誰なのかすらわからない廃人と化した悍ましい顔芸とも言えるビジュアル、鬼気迫る恐ろしさも仲代達矢の目力あってのもの

もう一人はおちゃらけたピーター
彼がこれほどの大作、しかも超おいしい役で出演しているという事に、バラエティ番組のイメージが強いので最初はかなりの違和感がありましたが、物語が進むにつれて素晴らしいキャスティングだと思えた

構想10年 製作費26億円
当時では考えられないほど膨大な制作費だったので日本だけでは調達できず、フランスからの資金提供を受けてまでこれほどの超大作を完成させた黒澤明監督のライフワーク作品をこの目に一生焼き付けていきたい

ふと、しんちゃん映画の『戦国大合戦』も本作『乱』を引用していたんだろうなと気づいました👌🏻

〈 Rotten Tomatoes 🍅97% 🍿95% 〉
〈 IMDb 8.2 / Metascore 96 / Letterboxd 4.4 〉

2021 自宅鑑賞 No.059 U-NEXT
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