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スターリングラードのHKのレビュー・感想・評価

スターリングラード(1993年製作の映画)
4.8
「ふたりのロッテ」「ヒマラヤ 運命の山」などのヨゼフ・フィルスマイアー監督による戦争映画。「Uボート」の製作スタッフによる生粋のドイツ製戦争映画である。キャストはトーマス・クレッチマン、ドミニク・ホルヴィッツ、ヨヘン・ニッケルなどなど

1942年に第二次世界大戦を4年目に突入し、ナチスドイツ軍はソ連の工業都市スターリングラードに侵攻しようと企てていた。任務達成のために様々な戦場で活躍した一流の兵士たちも含めて若い兵士たちが集結した部隊を編成した。しかし彼らはスターリングラードの白い恐怖を知ることになる…

同名の映画が日本では有名であるが、あちらは原題が異なるしこちらのほうが適切なような気がする。

敗戦国ドイツだからこそ生まれたであろう戦争の地獄と理不尽を全て詰め込んだかのような内容となっている。

病院内での地獄絵図は「沖縄決戦」「赤い天使」、下水道での逃走劇は「地下水道」、人々がごみのように火葬されるシーンは「復活の日」、上官等による理不尽な命令などは「人間の條件」「陸軍残虐物語」など、そして何よりも地獄のスターリングラードでの飢えと寒さの苦しみは「八甲田山」にも精通するような怖さである。

イタリアの温かい浜辺のシーンがこの映画のオアシスであり、幸せな空間はそこだけしかない。そこから先は派遣されるまでは重苦しい雰囲気の中地獄が展開されていく。

この映画も主要な登場人物などは一応いるものの誰がどのような人物を認識するのは恐らく一回の視聴ではほとんど困難である。しかし、誰がどのような人物であるかはこの映画ではほとんどどうだっていい。

問題なのはどれほどの地獄の空間というものを一つの映画内に収めることができるのか、それだけが問題というかそれを全てやりきってこそ戦争映画の悲惨さを見事に体現させることができるのである。

序盤の市街戦、その後の塹壕戦、下水道での逃走劇、野戦病院の地獄絵図、囚人兵に対する理不尽な仕打ち、戦車隊との雪中戦、仲良くなったロシア人を処刑、食糧不足からの飢え、脱走するものの本陣にたどり着けず凍死…ありとあらゆる戦争での地獄を絵に収めている。

劇中、物語らしいものは存在せずただただ戦争の悲惨な光景を半ばドキュメンタリータッチに水平軸に描く。「橋」と違って各々の登場人物に肩入れすることがないため間延びすることなくテンポを保ちながら戦闘を楽しむことができる。

このタッチはほとんど「沖縄決戦」「日本のいちばん長い日」などの岡本喜八イズムにも精通するのではないのでしょうかね。この要素をそのまま後年は「プライベートライアン」「ブラックホークダウン」に落としこまれたのではないのでしょうかね。

嫌なものてんこ盛りながら、ちょtっとばかり不服なのは地下水道がきれいすぎること、目を覆うようなグロい光景が前述した戦争映画よりかはあまり含まれていないこと、全体の映画作りが完璧な分、細部のこういう場面の落ち度がちょっと目について困る。

中盤に出てくる女性兵士がちょっとエロかったですね。スラヴ系の女性ってやっぱり綺麗ですね。ちょっとこの男くさい戦争映画とは不釣り合いのようにも見えなくなかった。それでも良かったと思うけど。

やっぱり戦争というものは良くないことです。いやなものです。そういうものを分からせる為にもここまで残酷に描く必要があったのだと思いますね。ただ外連味のような部分がちょっと薄かったかな。それでも良かったと思います。

見れて良かったです。ドイツの戦争映画はたまらないですね。
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