みおこし

クルージングのみおこしのレビュー・感想・評価

クルージング(1980年製作の映画)
3.6
ニューヨークのクリストファー・ストリートは、ゲイの男性が集まる歓楽街として今日も栄えている。刑事スティーブは、そこで起きた同性愛者の男性の連続殺人事件の真相を探るべく、上司の命令で潜入捜査を開始するのだが…。

名匠ウィリアム・フリードキンがアル・パチーノを主演に迎えたサスペンス映画。
”ハードゲイ”という題材を真正面から取り上げ、公開当時賛否両論を巻き起こしたという本作。確かに男性同士による性描写だったり、ステレオタイプなイメージに基づく人物のいでたち(ヒゲをたくわえ、黒皮のファッション)だったり、1979年当時を想うとかなりダイレクトな表現が続くので、2021年の今観てもかなり衝撃的な作品でした。実際にクリストファー・ストリートにたむろする素人の方を起用しての撮影だったようです。
この作品の演出の問題点を挙げるとしたならば、これらの奇抜な描写の中に快楽殺人事件を絡めている点。見方によってはゲイの世界に対してネガティブかつ暴力的な印象を与えかねないわけであり、作品への否定的な意見が当時多く出たのも十分に納得でした。(それが理由なのか、ラジー賞作品賞にもノミネートされています…)

サスペンスやハードボイルド作品を描かせたら右に出る者なしのフリードキン監督。彼ならではのスリリングな潜入捜査の様子の描き方、”ミイラ取りがミイラになっていく”と言わんばかりの、刑事が次第に新たな自分に気づいていく過程の描き方も秀逸ではあったのですが、前述の問題点が個人的にはすごく気になってしまい、「めっちゃ楽しめた!」とは言い切れない部分が正直ありました。ただ、役作りの鬼として知られるアル・パチーノの熱演はやはり流石の一言。”目”だけですべてを語ってしまうあの演技に浸れるので、ファンの方にはオススメです!
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