カツマ

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊のカツマのレビュー・感想・評価

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊(1995年製作の映画)
3.8
1995年当時、まだ10代半ばの自分にとって、この映画はややハードルの高さを感じさせる近未来アニメと言ってよかった。だが、今やその後の映像作家たちに莫大な影響力を与えたアニメ映画の定番として名声を博し、ブレードランナー以降のSF映画の転換点として燦然と輝く日本が世界に誇るスタンダードとして君臨している。
先日ソニックマニアでもFlying Lotusがこの映画の劇中歌を選曲していたが、アーティスト、クリエイターのビジュアルセットを刺激する映像世界は今見ても全く古さを感じさせず、細かい造形の一つ一つにも独自の哲学を感じさせる驚異の映画体験が眼前に広がる。

そこは義体と呼ばれる電脳人間が存在する近未来。テロや犯罪の掃討に当たる公安9課の少佐こと草薙素子は、脳以外は義体で固めた戦闘型の電脳人間。彼女は国外亡命に手を貸していた外務大臣を暗殺し、そこから大臣の通訳の電脳が何者かに操作されているところまで辿り着く。容疑者にあがったのは『人形つかい』と呼ばれる電脳ハッカーだが、その素性は完全に謎に包まれていた。

記憶による自己の正当性、それを信じることの曖昧さを義体という操作可能な脳をベースにして描くことにより、近未来SF映画でありながら、人類の内面に肉薄した哲学的な物語を宿している、当時としてはかなり異色な作品だったろう。ゴースト、ダイブなど、連想するしかない固有名詞もチラホラ登場し、この映画では物語全体の世界観一端しか描いていないことも明白にしているようだ。

昨年ようやくハリウッドで実写化されることとなったが、ウォシャウスキー兄弟やジェームズ・キャメロンらの生み出した作品群の方がこの映画の遺伝子をより強く感じることができそうだ。あの狂人が念仏を唱えているかのようなサウンドトラックが、強烈に耳に張り付いて、しばらく取れてくれそうになかった。
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