櫻イミト

プリースト判事の櫻イミトのレビュー・感想・評価

プリースト判事(1934年製作の映画)
3.5
1930年代アメリカのマルチタレント、ウィル・ロジャースとジョン・フォード監督による3部作の2作目。本作は後に同監督が「太陽は光り輝く」(1953)としてリメイク。

南北戦争から20年以上たった南部ケンタッキー州の小さな町。プリースト判事の元に甥ジェロームが裁判官の合格報告にやって来た。彼の目当てはもうひとつ、隣に住む孤児のメイだった。二人の姿に判事は亡き妻との思い出を重ね微笑ましく見守っていた。そんな中、判事が床屋に行くと客の男たちがメイを「私生児だ」と嘲笑っているのに出くわす。途端に隣に座っていた男が立ち上がり、侮辱した男を殴り倒した。これがきっかけとなり大きな事件につながっていく。。。

面白かった。ただし情報量が意外に多く初見で付いていけなかっため2回観た。2回目では、ラストに向けて沢山の繊細な布石が打たれていることが良くわかり面白さが倍増した。

ロジャースとフォード監督タッグの前作「ドクター・ブル」(1933)は、ロジャースを前面に出そうとした為か演出に迷いが感じられた。しかし本作はフォード監督ならではのセンチメンタルな演出がハッキリと打ち出され、結果的にロジャースの良さも引き出されていたように思う。

中でもプリーストが、夜の庭で語り合う若い二人に自らの若き日を重ね、続いて家族の遺影を前に独り語りするシーンは、美しい映像と人情味ある演技がシンクロしてパーフェクト。遺影にプリーストの顔が映るカットには涙腺を揺さぶられた。

ただし映画の把握途中となる前半パートであり、初見時にはこのシーンの意味の深さが汲み取れなかった。南部の人々に横たわる南北戦争の記憶の大きさや南部至上主義をもっと自分が認識していれば、映画の把握に戸惑わなかったと思う。言い訳として、「太陽は光り輝く」は戸惑いなく観れたので、本作も90分尺で背景説明にもう少し時間が裂かれていたらより解りやすかったかもしれない。

本作は、プリースト判事が主役の「太陽は光り輝く」の前日譚だと思い込んで鑑賞した。実はリメイクだったのだが、内容は大きく違うので、前日譚と捉えても違和感はないと思う。

※裁判中に金属壺にガム?を飛ばす男を演じたのは、フォード監督の兄、フランシス・フォード
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