円柱野郎

潜水艦イ-57降伏せずの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

潜水艦イ-57降伏せず(1959年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます


沖縄が陥落後の1945年6月、いよいよ本土決戦の迫る中、前線で戦っていた伊57潜に和平交渉のための外交官輸送の密命が下される。

序盤、ポツダム会談に合わせて外交官を送り込み有利な状況で和平も結ぶための作戦だ、というペナン基地司令や参謀の言に対して、池部良演じる主人公の河本艦長が「和平と降伏とどう違うというのです!」と食って掛かる場面が印象的。
本土決戦、一億玉砕、軍人としての本懐といった空気の表現だろう。
今観ると狂気じみた反応だなあと思う一方で、「ここで降伏しては勝利を信じて戦死していった多くの部下や戦友が犬死にではないか」という艦長個人としての想いも分かるので、複雑なところでもある。

参謀の言う大局を見ての講和論は、論としてはありだけれど実際には遅きに失しているし、実際劇中では伊潜が目的を達する前にポツダム宣言が発表され、作戦自体が無意味になってしまう。
冒頭の回天の特攻シーンと、結末の伊潜の体当たりを構造的に対にしているのは明らかに意図的だろうと思うけど、海軍出身の松林監督がどのような想いで14年前の戦争を撮ったのかは感じたい部分かな。

降伏か戦死か、河本艦長は狂気の人とは描かれないし、むしろ紳士で理性的な人物として描かれている。
それをして、もはや実際には意味のない戦闘かもしれない、かもしれないが最期まで軍人として戦うことを選んだ姿を描いたのは、そうやって死んでいった者たちへの敬意があったのだろうか。

作品内容としては後の潜水艦映画に比べると割と淡泊な印象。
艦内のドラマを動かす要因が外交官の娘の我儘に絡んだものというのは、正直言って見ていてちょっとイライラしてしまった。
なので中盤の平田昭彦演じる軍医長が彼女を叱責するシーンで溜飲の下がる思いはするのだが、戦争映画としては戦場の緊迫感よりも彼女との軋轢の方が目立つので余計に淡泊に感じたのかもしれないね。

映像的には息苦しさを感じるほどではなかったけれど、蒸し暑そうな艦内の様子や爆雷に耐える様子などの潜水艦映画としてのフォーマットがちゃんと入っているのは良かった。
垢取り競争はちょっとびっくりw
特撮シーンとのギャップはちょっと感じるところもあるけど、場面場面で使われる本物の潜水艦映像が迫力に貢献していると思う。