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グエムル -漢江の怪物-のカツマのレビュー・感想・評価

グエムル -漢江の怪物-(2006年製作の映画)
3.6
ポン・ジュノ監督とソン・ガンホのタッグといえば公開を控える『パラサイト』があまりにも楽しみだけれど、このタッグ繋がりで韓国映画史上でも異色のモンスターパニックスリラーを鑑賞!
実は反米に加え環境破壊問題や政府の隠蔽工作など社会派の面において多義性を持たせていて、本当の矢尻の先はもっと現実的な要因へと向けられた、何気に硬派な作品だった。

『殺人の追憶』に続いてポン・ジュノとソン・ガンホがコンビを組み、そこに売れっ子となってきていたぺ・ドゥナらも加えた豪華な布陣を実現!韓国映画らしく家族が重要な幹となっており、その枝葉には親子愛や兄弟愛といったベタだが芳醇な実を宿している。決してこちらの期待通りに進まない展開も韓国産らしく、やはりそこは胸糞展開も覚悟すべしといったところ。ドタバタ3兄弟が娘(または姪っ子)を中心に再生していく物語でもあった。

〜あらすじ〜

あるほのぼのとした昼下がり。露店の店先で店番をしているカンドゥはお客が来てもそうとは知らず爆睡中。父に起こされて漢江の川辺の客に焼きイカを持って行こうとするも、そこへ娘のヒョンソが学校を終えて帰ってきた。テレビではカンドゥの妹ナムジュがアーチェリーの大会でメダルを賭けた戦いの最中だったが、父に急かされてカンドゥは渋々客の元へビールを届けに行った。
その刹那、ふいに川が動いた。いや、川はせり上がり、巨大な怪物が姿を現したのだ!逃げ惑う人々。カンドゥはヒョンソを連れて逃げようとするも、ヒョンソは怪物にさらわれ川の中へと消えた。
怪物に殺された人々の葬式は悲劇の舞台となり、カンドゥはそこに駆けつけた弟や妹と共に泣きじゃくっていた。そこへ防護服を着た男が現れ、カンドゥを何かのウィルスに感染していると断定し・・。

〜見どころと感想〜

単なるB級モンスタームービーかと思いきやそうでもない。クリーチャーのヴィジュアルがあまり怖くないため、モンスターものとしては肩透かしを食らうが、社会派ドラマの一面に目を転じれば、この作品の全体像が見えてくるだろう。ポン・ジュノはかなり強い反米のメッセージをこの作品に込めており、それは序盤のホルムアルデヒドを下水に流すシーンから一貫して貫かれている。明らかに身体に悪そうなエージェントイエローのガス攻撃も、アメリカ軍への揶揄が含まれており、かなりダイレクトな反米の旗印を掲げている。

一方パニックスリラーとしては拙いところもあるが、そこは韓国が誇る巨匠ポン・ジュノだ。パノラマ撮影のような横滑りするカットを多用して、スピード感と臨場感を増強。スプラッター描写は薄く、残酷描写はサラリと済ませるものの、それが逆に事のエグみを増しているように感じる。

韓国の国民的俳優ことソン・ガンホ(日本だと役所広司のポジションかと)の体当たりの演技はさすが。違う道を走り続けてきた三兄弟の点と線が交わる瞬間をクライマックスに持ってくる展開も熱い。10年以上前の作品だが、この頃からすでに韓国映画の隆盛は始まっていたのだなということを匂わせる作品でしたね。

〜あとがき〜

先日の『殺人の追憶』に続いてのポン・ジュノ祭りですが、カンヌで絶賛された『パラサイト』が待ちきれないので、公開までに彼の旧作を漁っていこうかと思います。若き頃のぺ・ドゥナの魅力が炸裂する『吠える犬は噛まない』がいいかなと思いますが、そこはマイペースに開拓していきたいと思っています(笑)
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