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グエムル -漢江の怪物-のmのレビュー・感想・評価

グエムル -漢江の怪物-(2006年製作の映画)
4.9
改めて観てやっぱりポン・ジュノって怪物だなと思う。「殺人の追憶」や「母なる証明」のような誰が観ても完璧と分かる大傑作だけじゃなく、こんな一筋縄ではいかない異形の大怪作を作り上げてしまうんだから(しかし「グエムル」も「殺人の追憶」も「母なる証明」も、人間観と演出の完璧さは地続きだ)。
泣いていいのか、怒っていいのか、興奮していいのか、哀しんでいいのか、全てが混然一体のまま感情もジャンルもぐちゃぐちゃにミックスされ混じり合い更に政治風刺も加わり、ただただ『そのカオスこそが人生なのだ』と言わんばかりに常人を置き去りにして映画は遥か高みを悠然と目指して突き進んでいく。ユーモアとペーソスと緊張感と間抜けさ。まだ10代だった頃に劇場で衝撃を受けて2回観に行った。未だにこの映画をこうした形で作り上げたポン・ジュノの事がよく分からなくて恐ろしいし、それ故に敬意を抱かざるを得ない。

あまりに映画として異形過ぎて一般ウケは勿論しなかったが(パクリ?ちゃんと作品観てから言ってる?)、やはり本物の天才というのはいるんだなとこの映画を観る度に思う。

絶妙な大きさの怪物演出は他に類を見ない斬新さで、怪物の動きや周りの人々の反応の絶妙な間抜けさに生々しさがある(この辺は後の「オクジャ」に繋がっている)。VFXのクオリティも高い。音楽も天才的。

まさに悲喜劇な葬式、病院からのすっとぼけた脱出劇、皆でそこにいない娘にご飯を食べさせてあげるシーンが最高。

苦味と哀愁、少しの可笑しみが混じり合った結末がずっと頭に残っている。
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