青山

グエムル -漢江の怪物-の青山のレビュー・感想・評価

グエムル -漢江の怪物-(2006年製作の映画)
3.9

(パラサイトも観たけどまだ感想まとまってないですので先に)



漢江のほとりで父と共に売店を営むカンドゥ。彼はぐうたらダメ男だが娘のヒョンソのことは溺愛していた。
しかしある日、漢江に怪物が現れ娘を攫っていく。カンドゥは父、大卒ニートの弟、アーチェリー銅メダリストの妹と協力してヒョンソの行方を捜す......。



アカデミショウ記念遡行履修です。

いやはや、おもちろかった。
タイトルの通り怪獣映画ではあるのですが、それだけに止まらないジャンルミックスの闇鍋的魅力を備えた傑作です。


まずは冒頭が圧巻。
川辺でビール飲みながらレジャーシート敷いてピクニックしてる行楽客と、売店で居眠りしながら客のスルメイカの足を1本つまみ食いする主人公。
そんなどうしようもなく平和で気怠い日常の風景の中、橋の方を見つめる人。おもむろに集まる野次馬たち。主人公もまた、その1人。
と、そこには奇妙なモノがぶら下がっている。
そして、そいつは暴れ出す。
突如として日常の光景が惨劇に変わる。それでもそれが起きてからもずるずると日常の感覚を引きずっているように、緊張感の伝播には時差があったりもして、非常にリアルな没入感が素晴らしい。
怪物の造形も非常にキモいっすね。
魚と犬と虫と花と性器をよくかき混ぜて便所に流し込んだみたいな外見。ガッズィーラみたいなカッコ良さ皆無なところが逆にかっけえゲロ怪獣です!!
最近ドライアイの治療をしてるのに、こんなの見せられたら瞬きすら出来なくて目は渇く一方ですやん。

と、モンスターパニックとしての魅力を導入部で使い果たした感さえありますが、そこからが闇鍋の楽しさ。

「娘を取り返す」という至極まっとうに王道なテーマで一本筋を通しながら、英題の通りのあれ系パニック、さらに「ゴールデンスランバー」っぽい逃走劇、サスペンスの裏に忍ばせた社会風刺と、ところどころに振りかけられるユーモア。
そのユーモアがまた厄介で、なんつーか、絶対に笑ってはいけないシリーズなんですよね。
娘を想う真剣な主人公の気持ちが見た目滑稽になってしまって笑っちゃうみたいな、不謹慎系シリアス笑い。アウト〜〜!ってなってケツ叩かれそう。
病院のシーンとかね、なんか笑っちゃうよね。ごめんよ......ごめんよ、カンドゥ......。

また、怪獣が出てくる映画ではありつつ、怪獣の怖さだけじゃない心理的に嫌なシーンがちょいちょいあるのはさすが。とある場面では泣きそうになりつつショックで目見開いてまたもドライアイを悪化させたよ......。先生、目薬をもっとくれ......。


キャラもみんな等身大に感情移入できて良い。
ソン・ガンホ演じる主人公のカンドゥは三枚目なのに娘への想いだけはかっこいいという魅力的すぎるおっさんですが、ファミリーも負けてない。
弟くんの活劇のカッコよさよ!妹のペ・ドゥナの可愛さと、クライマックスのあのシーンの表情がもう......。そしてパパ!頼りないけど年の功みたいな、めちゃくちゃいい味出してる......。みんな寝てるのに滔々と思いの丈を語るシーン最高でした。あのシーンが一番好き!
あと、出番少ないけど娘さんの存在感も良かった。


クライマックスはちゃんとアクションとしてのブチ上がりも。
で、パラサイト見た時にちょっと後日談が長えなと思ったんですが、今回後日談長いことを覚悟した上で見たら、あの後日談があってこそな気がしてきました。パラサイトの後日談もまた見直さなきゃね。
なんせ、まぁ面白かったです。映画館で観たい。
青山

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