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グエムル -漢江の怪物-のうにたべたいのレビュー・感想・評価

グエムル -漢江の怪物-(2006年製作の映画)
3.8
『パラサイト 半地下の家族』で、カンヌ国際映画祭にてパルム・ドールを受賞したボン・ジュノ監督の特撮怪獣映画。
グエムルとは괴물、つまりモンスターを意味する韓国語で、本作に登場する怪物の固有名称ではないです。
また、登場する怪物は単にグエムルと呼称されています。

主人公は韓国の首都・ソウルを流れる漢江(ハンガン)の河原で露店を営む一家です。
その家では店主の老父・ヒボンと居眠りばかりする長男・カンドゥ、そしてその長男がどこかから作ってきた娘のヒョンソの3人が住んでいます。
漢江流域ではその日も、川辺で余暇を楽しむ人々で賑わっていたのですが、漢江より突如現れた巨大な怪物により一転、大パニックになります。
この怪物(グエムル)の造形がかなり秀逸です。
大きな2本の前脚を持ち、複数の後ろ足と自在に動くしっぽを持つ巨大な淡水魚のような姿形をしており、かなり早い速度で動き回って、逃げ惑う人々を捕食する姿は悪夢そのもの、こんなものが突然、例えば江戸川なんかから現れて、川辺の人々を襲って食べ始めたら、なんて想像が容易にできるほど表現がリアルで素晴らしかった。
このグエムルが、カンドゥの目の前で愛娘ヒョンソを長いしっぽで捕え、川に逃げて行くことで、この家族とグエムルの戦いが始まります。

グエムルの誕生は、白人の科学者が劇薬を漢江にそのまま垂れ流したことが原因となっています。
これは2000年2月に在韓米軍がホルムアルデヒドを漢江に廃棄した実在の事件が元になっていて、それ以外のシーンでも反米的表現が強い印象がありました。
また、自国の政治、対応についても風刺的と感じるシーンが多々あり、グエムル以上に韓国政府や米国が敵として描かれていることが象徴的です。
日本人の我々としては、これだけ自国の政府を信頼できないものとして大々的に表現するような、特定思考が強い(ある意味で左翼的な)作品がヒットすることは考えづらいため、韓国民でないと作れない作品だなと思いました。

かなり面白かったです。
ホラーかと思えばくすりとできるシーンも多く、メリハリがあって飽きる隙がない2時間でした。
ただ、ラストはちょっと悲しすぎるかと。
勧善懲悪、ご都合主義が好みの自分としてはラストは不満です。