キャッチ30

グエムル -漢江の怪物-のキャッチ30のレビュー・感想・評価

グエムル -漢江の怪物-(2006年製作の映画)
3.8
 突如、現れた正体不明の怪物に人々は逃げ惑う。但し、闘うのは軍隊でもなければヒーローでもない。ごく平凡な一家なのだ。

 首都ソウルを流れる広大な漢江(ハンガン)にグエムル(怪物)が出現する。グエムルは米軍基地から漢江に流された大量の化学薬品から産み出された爬虫類の様な巨大生物だ。造形はH.R.ギーガーがデザインした「エイリアン」に似ている。グエムルは当然のことながら人間を餌にする。生け捕りにした人間は保存食として、下水講に連れて行かれる。
 
 漢江の露店の長男であるカンドゥは目の前で娘であるヒョンスをグエムルに攫われる。カンドゥは父のヒボン、弟のナミル、妹のナムジュと共に救出に向かうが一家は曲者揃いだ。カンドゥはヒーローとは程遠く、居眠りを繰り返す駄目男だ。ナミルは大卒だが、就職先が決まらないフリーター。ナムジュはアーチェリーの名手だがどこか鈍臭い。一方、政府はグエムルと接触したカンドゥを感染者と疑い、捕獲しようとする。

 監督のポン・ジュノはこのモンスタームービーをコメディとアクションと社会風刺を串刺しにして仕上げる。化学薬品を流す場面は在韓米軍が大量のホルムアルデヒドを漢江に流出させた事件にヒントを得て、米軍が介入する過程はイラク戦争を彷彿とさせる。お涙頂戴や安直なハッピーエンドに陥らないのも良い。日本映画は韓国映画のこういう姿勢を見習うべきではないか。