さすらいの用心棒

キツツキと雨のさすらいの用心棒のレビュー・感想・評価

キツツキと雨(2011年製作の映画)
3.9
無骨なキコリ(役所広司)と気弱な映画監督(小栗旬)の交流をとおしてゾンビ映画の製作に打ち込むさまを描いたハートフルコメディ。

沖田修一監督の『カメラを止めるな!』といった感じか。
製作は大体において人間が人間の扱いを受けていない。無関係の一般人が無理やり巻き込まれて、スタッフから、ちゃんとやれ、真面目にやれ、とか平気で言われる。あまりの待遇に「人のことを何だと思ってるんだ!」と怒鳴る役所広司の気持ちがものすごくわかる。なのに、楽しくて気が付くといつの間にか手伝ってしまう役所広司の気持ちも、よくわかる。
ゾンビ映画を製作するという面で同じくする『カメラを止めるな!』は物づくりへの情熱を描いた映画だが、その情熱を情熱的に描かないのが沖田修一監督。
どう見てもダメなテイクで小栗旬が役所広司に「OKだと思いますか?」と訊ねる場面がある。普通だったら「お前が信じるとおりにやればいい」とかいうセリフが出てくるところだけど、役所広司の答えは「どうでもいいけど、あの女優さんの髪、いい匂いするね」。
こんな感じで、この映画はずっとどこかがズレてる。わざとズラしているんだけど、直接的に描かない監督のはにかみが、全体にいい味を出している。その感じが好きなのね。