Melko

キツツキと雨のMelkoのレビュー・感想・評価

キツツキと雨(2011年製作の映画)
3.7
いぶし銀更年期木こりおじさんと、根暗ヒョロヒョロ映画監督の交流

いやー、役所広司は何やっても似合うなあ。こんなに畑違いの役をモノにするのかこの人は。もう始まりからわたしには熟練の木こりにしか見えなかった…
そんな、頑固で寡黙な山の男と、ゾンビ映画撮影隊クルーたち。序盤はヤキモキするのんびり展開。それもこれも、25歳の若監督が、撮影隊を引っ張りまとめ上げなければならないプレッシャーのためか、自分の書いたストーリーに満足いってないのか、撮影に取り組む姿勢がフラついているから。でも気持ちはわかる。やりたかったことをやってるはずなのに。これで良かったのか。これで大丈夫なのか。みんな納得してるのか。色々と気になりお腹下すわ爪噛むわ逃亡するわ大変。
責任者のメンタルは、現場の下っ端にもしっかり伝わってしまう。若かろうがなんだろうが関係ない。責任者の迷いや焦りは、周りの人間に伝わることで、締りのない雰囲気になってしまう。でも、助監督の言ってた、「監督ができるってのはなあ、凄いことなんだぞ!」というのもわかる。いままさに苦しんでる人間には聞こえないんだけどね。
そこで出会った木こりおじさん。
「………はい?」「………え?」「……呼ぶ?」と独特の間で喋りおとぼけかと思いきや、急に息子にキレたりと情緒不安定だけど、撮影現場で思わぬ手腕を発揮。車両誘導だろうがゾンビ役だろうが、誰かに必要とされる喜びを感じてワクワク生き生きしだすおじさん。なんとも言えず、かわいい!

監督に、不思議と聞こえる彼の声。出会った時から、彼は監督のメンターだったのかもしれない。そんな人がいてくれると、心強いよね。頑張れるよね。

困難続きの撮影。汗と涙の監督の成長とともに、文字通り村人総出で協力、バラバラだったチームも徐々にまとまりだし、クライマックスはまさかの青春な展開で滾る!オレンジのレインコートを着て駆けてくる木こりおじさんがカッコ良かったな〜

檜の椅子、一生大切にするんだろうな

自分のしていることに自信がなくなってしまった時、全く違う畑にいる人に純粋な意見を聞いてみることが大事なんだな

蛇足かと感じる最後も、遠くにいる第二の息子にエールを送るようで、じーん。。
Melko

Melko