ただのすず

キツツキと雨のただのすずのレビュー・感想・評価

キツツキと雨(2011年製作の映画)
3.8
「一人前になるのにざっと百年はかかる」

林業のおじさんと、その地に映画を撮りにきた心の弱い若監督の交流のお話。
何度も観ている映画なんだけど、観るたびにこんなに良い映画だったっけと、優しい気持ちになる。

広大な海や、宇宙の星々を見て、自分の悩みが如何にちっぽけであるか思うっていうのがあるけど、私は大きな樹にのぼっている人を見ている時が一番安心してそう思う。
20年、60年、100年、生きた樹も大して見分けがつかない、150年生きてもまだまだ細っこい。
何十年生きていてもできないことがあって、それが当たり前でそれいいって許されたような。

役所広司と小栗旬の間に流れる空気感がすごい。
手作りの椅子に名前を彫って自分の息子と同じような愛情を他人に当たり前のように注げる人、そしてそれを受け取って大切にできる人の温かさがすごい。
脚本がとても良い。
後、映画を愛している人の映画。
どれだけちっぽけで下らない映画も何百と人が関わって出来上がる。
だからこそ難しく得難く、そういう積み重ねが奇跡をつくると知っている人。

さっと晴れた一面の青空に肩の荷がおりて、好きなように歩き出したくなる。素敵な映画。