映画漬廃人伊波興一

トータル・バラライカ・ショーの映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

3.3
視覚的に描きようもない(音)が無くても成り立つ映画はあるかもしれないが(音のイメージ)が存在しない映画は成り立たない。
アキ・カウリスマキ『トータル・バラライカ・ショー』

「JFK」を担当したジョン・ウィリアムズや「ニューシネマ・パラダイス」を担当したエンニオ・モリコーネのように作曲家の偉大な才能が先行しすぎる余り完成作品を置き去りにする例外もありますが、その名を聞いただけで世界中の作曲家が立ち止まりそうなわが国の誉れ・故 武満徹さんがフェリーニとニ―ノ・ロータとの関係に言及しながら(映画音楽というのは作曲も大事ですが結局は監督に尽きるんです)と言う言葉を残しておられます。

著名な
イーストウッドとレニー・ニーハウス
阪本順治と梅林滋
黒澤明と早坂文雄
北野武と久石譲
等の関係からも明らかなように

「監督が音に対するイメージが明確でないと話にならない」と結んでいます。

では音が存在しないのでは、と訝りたくなるような静謐な作風である作家たち。
アンゲロプロスやカウリスマキなどは(話にならないのか?)
そんな事は絶対になく静謐な作風の作家ほど音に対するイメージが求められる存在であるのは言うまでもありません。

そのくらい、この音楽ドキュメンタリーはカウリスマキの(音)に対するイメージを具現化しております。

冗長になりがちなコンサート風景。
カウリスマキ特有の楽天性が脈打つ60分です。