このレビューはネタバレを含みます
私はよくレビューで『エゴの極致』が戦争だと書きますが…それはエゴを国家まで拡大すると『ジンゴ』になると思うから。
戦場という極限状態に自らの人間性を突き付けられた時、それでもなお『常軌』の道筋を見失わずにいられるか…それができないから『戦争』が起きるんでしょう。
鼠でさえ、追い込まれれば猫に牙を剥く。
それは生の本質。自らに死を与えようとする現実に、全てを賭けて抗おうとする意思。
その恐怖は私たちの『理性』の脆弱さを浮き彫りにして、根源的に宿る獣性を炙り出す。
Sanctity、Quality of Death。
安穏とした場所で生きる内に、私たちは『生と死』を大層な言葉で飾り立てるようになった。それはこの側面から見ると、純度の低い生命観に思えてくる。
倫理が守ってくれない場所では…
そんな言葉自体が軽々しくさえ思える。
時には死が『救い』にもなるし、地獄を生き延びた後に続く生は『苦しみ』を孕むだろう…詰まるところ、生き足掻くことは苦悩に塗れてる。
私たちに置き換えると、戦場では逃亡兵が一番まともで理性的なのかもしれない(苦笑)
理性に殉教する…肉体を超越する。そのメンタリティに至るには、あるボーダーを越えなきゃならなくなるんだと思う。
行動と結果、その後の現実が全て。
今さら『状況』を言い訳にして何になる?
私たちは犠牲の上に生きている。
その上で、価値ある生を追求している。
争いは終わらないだろうという達観。
でも、それを良しとしてはいけないよね。
ラスト、ヘリから見下ろした焼け野原。
戦争が何を残してくれるの?
互いに傷付き、疲れ果てるだけ。
そうならない為に、心を持って生まれてくるんじゃないのかな…なんて事を考えさせられる。
監督の語るメイキングの特典映像も必見。
若かりし日の名優たちが、文字通り体当たりで挑んだ骨太な戦争映画。私たちの歴史のひとつとして残されていくべき作品。