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プラトーンのYYamadaのレビュー・感想・評価

プラトーン(1986年製作の映画)
3.8
【戴冠!アカデミー作品賞】
 第59回 (1986) アカデミー4部門受賞
 (作品/監督/編集/録音)

【戦争映画のススメ】
プラトーン (1986)
◆本作で描かれる戦地
ベトナム戦争 (フィクション)
◆本作のポジショニング
 人間ドラマ □□□■□ アクション

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・1967年、アメリカ人青年クリスは、徴兵される若者たちの多くが貧困層であることに憤りを感じ、大学を中退してベトナム行きを志願する。しかし、最前線の小隊「プラトーン」に配属された彼を待ち受けていたのは、想像を遥かに超える悲惨な現実だった。
・小隊では冷酷非情な隊長バーンズと無益な殺人を嫌う班長エリアスが対立していた。それぞれ出自の異なる仲間たちとともに過酷な戦場を生き延びるうちに、戦争になじんでいくクリス。ある日、ベトコン基地と思われる村を襲撃したことをきっかけに、バーンズとエリアスの対立は決定的なものとなる…。

〈見処〉
①戦争で傷つくのは、いつも青春——
・『プラトーン』は、1986年に製作された戦争映画。
・タイトルの「プラトーン」とは、軍隊の編成単位の一つで、30名から60名程度で構成される小隊を意味する。
・ベトナム帰還兵であるオリバー・ストーンの実体験に基づき、当時の平均的なハリウッド映画の半分にあたる600万ドルの予算にて製作された本作は、北米のわずか6館の映画館でひっそりと公開されたが、「この作品と比べると、過去の戦争映画の最高傑作でさえ、遠くからクレーン・ショットでこわごわと撮った作品に見えてくる…プラトーンは地上ゼロメートルで撮られた映画(LAタイムズ)」など、瞬く間に評判は全米に広がり、北米だけで製作費の20倍以上となる1億3千万ドルを稼ぎ出した。
・さらに『プラトーン』はアカデミー賞で、作品賞、監督賞など主要4部門を受賞、オリバー・ストーン監督の名を世界に知らしめた。
・出演はチャーリー・シーン、ウィレム・デフォー、トム・ベレンジャーのメイン3人に加え、若き日のフォレスト・ウィテカー、ジョニー・デップもキャストに名を連ね、ストーン監督とともに多くの俳優陣の出世作となった。

②本作の革新性
ベトナム従軍者であるオリバー・ストーンの実体験を反映した徹底的なリアリズムを生むため、ストーンは従来にない革新的な手法を取り、関係者を驚愕させることに成功している。

◆リアルな戦争描写
過去のアメリカ視点の戦争映画では、絶対に表現されなかった「無抵抗のベトナム民間人に対する虐待・放火・虐殺」、米兵たちに広がる「麻薬汚染」「仲間内の殺人・同士討ち」「敵兵に対する死体損壊」など、自国の軍隊に対する賛美を無視した「現実のベトナム戦争」を描いた。

◆俳優に対する強制トレーニング
・本作に参加した全ての俳優を撮影2週間前からフィリピンのジャングルにある警察用訓練基地に滞在させ、軍隊同様の生活を実践させた。
・寝る場所はコツボと呼ばれる穴。トレイやシャワーもなく、食料は1日2箱の冷えた軍用食。髪型も軍人仕様とし、ジャングルで夜を明かす際は、ローテーションで監視まで行わせた。
・2週間に及んだ地獄のキャンプを終えた俳優を休む間もなく直接ロケ地に向かわせた。オープニングの撮影時には何事もないかのように、目の前を黒い死体袋が運ばれ、俳優たちは唖然としたが、監督のストーンは、ヨレヨレの彼らを見て満足そうに笑ったといわれる。

◆イメージを超えたキャスティング
・本作に登場する2人の重要キャラクターに対して、ストーンは「暴力的」なバーンズ役にアメリカ的な美形に分類されるトム・ベレンジャーを、「理性的」なエリアス役に、悪人顔のウィレム・デフォーをキャスティング。イメージと逆設定となる配役によって、よりリアリティーが増し、結果的に2人の俳優のキャリアアップにつながった。
・なおオリバー・ストーンは主人公のクリス・テイラー役に、当初カイル・マクラクラン、キアヌ・リーブス、エミリオ・エステヴェス、ジョニー・デップを候補に挙げたが交渉が成立せず、「テイラーを演じるには若すぎる」として出演を断っていたエステヴェスの弟のチャーリー・シーンが演じることとなった。また、一度は断られたジョニー・デップに対し、ストーンは「彼は将来一大映画スターになるであろう」と予測し、端役のラーナー役での出演を直訴している。

③結び…本作の見処は?
史上有数の「出世作」映画。当時のオリバー・ストーンは時代の寵児に登りつめた。
◎: アメリカやアメリカ軍への賛美を徹底的に排除しつつ、不潔で血生臭い戦地を描いた本作は『地獄の黙示録』『プライベートライアン』とともに戦争映画のエポックメイキングとなった傑作。ジャケット写真で有名なデフォーのシーンなど、全編にわたり、戦争=不条理を描き、視覚的に綺麗な場面は皆無。
○: 監督のオリバー・ストーンはじめ、出演のチャーリー・シーン、ウィレム・デフォー、トム・ベレンジャー、フォレスト・ウィテカー、そしてジョニー・デップのルーツを確認するだけでも、意義深い作品。本作の3年後にチャーリー・シーンとトム・ベレンジャーは『メジャー・リーグ』で共演することになる。
▲: 本作によって、戦争映画のリアリティは格段に進化したが、公開から35年が経過した現在視点で鑑賞すると、その脚本レベルは「標準水準」であったりする。
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