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ハスラー2のLudovicoMedのレビュー・感想・評価

ハスラー2(1986年製作の映画)
4.2
勝敗を競うタイプのスポーツ映画ではなく、あくまでもいかに相手を騙し、大金を稼げるか、といった賭け事のロジックを取り扱った作品。

日本人には馴染みのない文化だけど、周到な準備と駆け引き、モブを誘い込み、より多くの賭け金を相手にプールさせるか。

ギャンブルごとのロジックを丁寧に描かれているため、単に登場人物がカネを巻き上げ、喜んでいるのではなく、観客側もその仕組みを理解した上で、欺くため最大限のカタルシスを得られる。

なにより本作はスコセッシの作品上でも、最も俊敏なカメラワークを堪能できる映像の博覧会。
上下左右にパンして、クローズアップが気持ち良すぎる。
映像のテンションが非常に高く、加えて役者陣はほぼ早口でぐいぐい持っていく。

シュノーケルを駆使し、ビリヤード台を縦横無尽に駆け巡る。

せわしなく、カットを重ねモンタージュによる隙のない演出。

エリッククラプトンなどのロック、ブルース中心の楽曲が鳴りやまず、映画のテンポを持続させる。

特に『Werewolves of London』の場面の編集とビリヤードのシーンがカッコよすぎる。

オープニングのナレーションにある「時には、運も芸術である」のように、必然性重視のコンテンツである『映画』に、偶然やたまたまで、話の流れを押し込んでいく本作は非常に稀有な作品だと思うし、このテーマ性だからこそ、成り立ち『偶然』が都合よく映るのではなく、リアリティを増す機能を果たしているのは、本当にすごいと思う。


トムクルーズ演じるヴィンセントが賭け事の術を嗜んでいく中で、師匠であるエディに一杯食わす場面では、映画的な清々しさを得られる。
それと比較し、ポールニューマン演じるエディが、名誉を失う事件をきっかけにハスラーを離れていく。

繊細な思いが交差し、非常に中途半端で、これからという所でラストを迎えますが、そここそが最高のポイント。
映画は終わりを告げるけど、彼らの物語は、終わりを迎えず、むしろ始まりを示唆させ、「カムバックだ」にのせてEDに向かう。

もう一度人生をワンスアゲインさせる決意を見せる超クールなカット。
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