Azuという名のブシェミ夫人

わが青春のマリアンヌのAzuという名のブシェミ夫人のレビュー・感想・評価

わが青春のマリアンヌ(1955年製作の映画)
3.9
動物たちが住む深い森、霧煙る湖の傍に古城が建っている。
少年、青年達が暮らす寄宿学校である。
そこへやってきた転入生ヴィンセントと対岸にある“幽霊屋敷”に住む美しきマリアンヌの恋。

白黒ではあるけれど、幻想的な風景やこだわり抜かれて選ばれた城や館がとても美しい。
そして、“幽霊屋敷”から不意に現れる麗しきマリアンヌ・・・夢か現か分からなくなるような世界観に嘘みたいに馴染む美人さんでうっとり見つめてしまう。
松本零士さんの永遠の憧れの女性であるそうだけれど、至極納得。
松本少年の心は囚われたようになり、マリアンヌに夢中になったことでしょう。
20代のように見えるけれど、半ズボンで年齢設定が謎の青年ヴィンセント。
彼は少しマザコン気味であり、母親の興味を喪失したと感じている寂しさから、まるで夢から抜け出してきた様な理想の女性マリアンヌに陶酔してしまったのでしょうね。
いや、そもそも本当にマリアンヌが存在していたのか・・・その答えは分かりません。
ヴィンセント以外の生徒達は、誰もマリアンヌを目にしていませんので。
しかし、彼にとってそれが夢であれどうだっていいことなのかもしれません。

マリアンヌは幻想的な存在ではありますが、ヴィンセント自身も寄宿学校の生徒達からすると遠く離れた異国からやってきた不思議な人物。
さらに言えば、そんな生徒達ですら私から見ると不思議な子たちで、不良なんて言われているグループの青年達もやっていることは小学生の様だし、語り手である青年はもう大人のように見えて、一体彼らはいつまでこの閉鎖的な空間で過ごしていくのだろうかと思える。
彼らは恋を知らないのかもしれない。
余所からやってきた校長の親戚の娘がヴィンセントに執着したのも、もしかしたら他の男の子達が“女性”という対象にさほど興味を示さなくて、唯一同じく外の世界から来たヴィンセントだけが自分と同類に思えたからなのかな。
それにしても彼女の最後の扱いはなかなか壮絶。自業自得か。

まるで深く立ち込める霧に入ってしまったかのようにこの世界を手探りで通り抜けて、やっと見晴らしが良くなったのだけれど、頭にマリアンヌの姿がモヤモヤと残る。