リストラ請負人のライアンは1年のほとんどが出張で各地を飛び回る日々を送っている。
出張先のバーで出会った,アレックスと「割り切った付き合い」をしながら,人生の「荷物」を背負うことなく,気ままなシングルライフを送っていた。
そんなある日,ライアンの下で,ネットTV電話でリストラ宣告を行うというプランを引っ提げて入社してきた新卒社員のナタリーがOJT受けることになり,またそれと同時期に妹が結婚することになり,ライアン自身否応なくこれまでの生き方に向き合うことになる。
[感想]
ライアンの価値観は私生活においても合理主義を貫く,ウォール街のホワイトカラーのストレオタイプ的な価値観なので,今の感覚からすると,別に目新しい感じもしないし,むしろちょっと古臭くも感じるかもしれない。新入社員のナタリーはそんなライアンの生き方を否定し,リストラ宣告はネットTV電話を使った面接という新しいやり方を提案し,一方ライアンはあくまでも対面の面接にこだわる(出張でのマイル獲得も目当て?)。
一人の中年男が,自分とは異なる価値観と戦っている様子が見て取れる。そういう意味では普遍的な話なのかもしれない。
スマートなアメリカンジョークなども交えたテンポのよい会話とストーリー展開で観る者を飽きさせず,それでいて思わず考えさせられるシーンが多々ある。
『シャーロックホームズ』とどっちが面白かったか,と訊かれても,甲乙つけ難く,『シャーロックホームズ』の面白さとは全然ベクトル違う面白さがあった。
以前,同じくリストラ請負人が主人公の小説『君たちに明日はない』を読んだこともあり,映画の本筋とはぶれるにせよ,ライアンが多くの面接相手をどうやって納得させていくのか,もう少し丁寧に描いてほしかったなぁ。
(2010年4月24日@TOHOシネマズシャンテ)