ブタブタ

ポーラXのブタブタのレビュー・感想・評価

ポーラX(1999年製作の映画)
2.5
映画による純文学、これぞジュンブン(←笑・このダサいカタカナ表記はマンガ『響』(欅何とかの人主演で映画化されるアレ)より)だと思う。
て言うかこれって太宰治『人間失格』ほぼそのまんまじゃ?!
主人公ピエールは貴族の血を引き、お城に住み美しい母親を「姉さん」と呼び美しい婚約者もいて覆面作家として成功、オマケに美男子。(ふざけんな!笑ヽ(`Д´)ノ)
まさに誰もが羨む様な人生を送っていながらその全てを捨てて破滅へと突き進んで行く。
でもそれも満たされ過ぎた生活に意味も無くただ退屈を感じて、初めは小説のネタになるとか、ちょっとした自分探しの旅程度に思ってたのでは。
外交官の父親が内戦下のユーゴで作った腹違いの姉と称する女イザベラの出現であっさり何もかも捨ててついて行ってしまう。
イザベラがいる世界は「真実」であり自分のいるこの生温い世界は「嘘」であると判断したからこそピエールはそっちへ行ってしまうのだろうけど、それもイザベラがただ言葉で真実真実と繰り返しているだけで何が真実なのか説明はない。
困窮の果てに結局は嘗ての栄光や過去の自分に縋るしかないが、現在の自分はもう世間から顧みられる事は無い。
人間失格の主人公が地下活動組織に参加したりしますが、落ちぶれたピエールも途中インダストリアルミュージックを演奏する(それが教義?)カルト集団のアジトである巨大な倉庫跡廃墟へと身を寄せますが、この集団の目的も不明でピエール達に寝床を提供してくれるものの特に助けてくれるわけでもない。
地獄の血の川をピエールとイザベラが流れていくイメージシーンしか印象には残らなかった。
今あらためて見るとこれはピエールの内面、心の変化、真実は人の内にある、みたいな事を描いているのだと思いますが、ただただ自分本位で身勝手なピエールの独りよがりを見せられているだけで、ピエールのそれ迄の生活を心ならずも破壊する為だけにやって来たイザベラも難民と言うバックグラウンドがあるにせよ典型的な男をダメにする女にしか見えない。
ポンヌフの恋人から八年ぶりのレオス・カラックス新作で楽しみにして見に行ってガッカリして帰った思い出。

今はなき思い出の渋谷シネマライズにて。
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