健一

原爆の子の健一のレビュー・感想・評価

原爆の子(1952年製作の映画)
3.7
1952年 🇯🇵映画 モノクロ作品。

新藤兼人監督作を観るのは恐らく初めて。

被爆から7年後に製作された本作は原爆を題材とした最初の日本映画と言われている。

広島の幼稚園で働いていて被爆した孝子は瀬戸内海の島で教員をしていた。
原爆投下から7年後の夏、孝子は広島を訪ね かつての使用人だった岩吉と再会する。
岩吉は被爆し 浮浪者同然の暮らしっぷり。
孝子は元同僚から教え子達の居所を聞き子供達を訪ね歩く。
生き残った子供達は中学生になっていた。
ある子は原爆症で父を亡くし、ある子は今だに病床に臥せている。ある子は両親を亡くし兄弟達と肩を寄せて暮らしていた。

終戦から7年しか経っていないので広島の街並みがとにかくリアル!
橋の上から川に飛び込む子供達、所々に木々が生い茂っていたり パン屋、時計店など小さいながらも商店が立ち並んでいて少しずつだが復興していったのだなと痛感する。

一方で 原爆症に苦しむ人々、両親を失った多くの孤児達、そのままのガレキ、そして原爆ドーム。
生きていくのに精一杯な人々の生活状況にも胸が苦しくなる。

自らも両親と妹を原爆で失った主人公の孝子が少年少女になり成長している子供達を訪ね再会していくと同時に被爆からたった7年しか経っていない広島の今をフィルムに焼き付けていて観客の眼を離さない。想像以上に衝撃的でした。

飛行機が爆音をあげて空を飛ぶ。
無邪気な子供たちは「飛行機だ!」と空を指差し微笑む。
大人たちは「えっ、まさか!」と思いつつ不安さと恐怖心を抱いて空を見上げ 消えていく飛行機に安堵する。
このシーンがたまらない。観ていて本当に恐ろしかった。

今から68年も前の作品なので 音声の不備、声の聴き取りづらさ、映像の乱れ等は あらかじめご了承ください。

この作品が現代に残っているということが重要なのです!
健一

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