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その男を逃すなのbeachboss114のレビュー・感想・評価

その男を逃すな(1951年製作の映画)
4.0
フィルム・ノワールにカテゴライズされているせいで、しまりのないB級サスペンスに感じられるが、「愛を知らない男が猜疑心で自滅する文芸佳作」と捉えれば、そんなに退屈はしない。

犯人はマザコンの抜け作で、ヒロインは最後まで何考えてるかサッパリ分からない喪女。交わす会話は葛飾柴又の団子屋か曙橋の中華料理屋一家みたいにスットコドッコイなのに、カメラワークだけが場違いなまでに冴えまくっているから困ってしまう。

つまりは、せっかく腕のいい職人たちを集めたのに「噛み合ってない」せいで、何ともどっちつかずで中途半端な仕上がりに。いや、むしろ、カメラマンだけが突出して良い仕事をしたかのように見えてしまうから始末が悪い(実際は、現場でカメラマンだけが制作意図を理解していなかっただけかもしれないのに)。喩えて言うなら、刺身で食った方が旨いのに、つい試してみたくてフランベしちまったような。

劇中の登場人物たちだけでなく、制作陣も不幸な出会いだったとしか言いようがない。
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