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男ありてのnagashingのレビュー・感想・評価

男ありて(1955年製作の映画)
3.0
いちおう取材はしたらしく、50年代のプロ野球選手のそこそこリアルな生活風景がうかがえるのは興味深い。ホームドラマの主役に野球の監督をすえたことで、監督と若手選手の軋轢が、舅と婿的な対立へと近似していくのも新鮮。ただ、家庭をかえりみない昭和親父の反省を見せることが、むしろ家父長の業深さの容赦へとかたむいているのはあきらか。であるなら、中途半端に家庭のお涙ちょうだいへと落着するよりも、男の突き抜けたエゴイズムを皮肉る悲喜劇へと発展したほうが潔い。そういう意味では、まさかの「キャッチャー・俺!」が大活躍するクライマックスは常軌を逸しておりよかった。玉井正夫が撮る、窓を開放した日本家屋の二階があいかわらず絶品。屋根上にある井戸タンクとか最高。岡田茉莉子のエプロンで手をぬぐう志村喬の地味にムカつく所作など、こまやかな演出が光る。
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