ハル

ロング・グッドバイのハルのレビュー・感想・評価

ロング・グッドバイ(1973年製作の映画)
3.8
原作の「長いお別れ」を読んだ読者諸君が怒るのも無理はない。小説で描かれたマーロウと、映画で描かれた彼は、あまりにも違いすぎる。「ロバート・アルトマンが撮ったのだから」と言ったところで許してくれようはずもない。

しかし、何かを作ろうとして、新しい何かが生まれることも、往々にしてある。この作品の場合、硬派でタフガイのマーロウが、良い意味で崩され、軟派で飄々とした新しいハードボイルドキャラが生まれたと、好意的に捉えられないものか。実際問題として、これにインスパイアされた松田優作が、日本において、「探偵物語」の工藤俊作を産み出したではないか。私は、工藤ちゃんに憧れたタチだからか、エリオット・グールド扮するこの風変わりなマーロウに、親近感を覚えるのである。

夜中に猫の餌を買いに行くマーロウ、息を吸うように煙草を吹かすマーロウ、依頼人の奥さんを追っかけようとして事故ってしまうマーロウ。間抜けだけれど、きちんとした哲学も持っている。

ラストシーンは賛否の別れるところだろう。この部分だけは原作に忠実であっても良かったかもしれない。
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