shibamike

死霊の盆踊りのshibamikeのネタバレレビュー・内容・結末

死霊の盆踊り(1965年製作の映画)
1.0

このレビューはネタバレを含みます

(年末、慌ただしい人混みの新宿駅東南口付近にて)
柴三毛「ホ、ホ、ホンマに…ホンマにオモロないやんけぇええっ!」
と夜空に向かって魂の咆哮をしてしまった。

本当に面白くなかった。

ということで、期待通りだったので大満足だったのだけれど、敬意を表して1.0点!
(5.0点つけちゃうとfilmarksの平均点上がっちゃいさうだし。)
覚悟していたつもりだったけれど、そんな自分のせうもない覚悟を余裕で上回る荒唐無稽さ。本当に上映時間中が苦痛。Filmarksではジャンルが"コメディ"扱いになっているけど、ジャンル"苦痛"でも良い気がした。

ストリップダンス meets ホラー?みたいな感じなのだらうか。
満月の夜にとある墓場で、悪魔の女王?が闇の支配者?を接待するために、色んなバックグラウンドを有した美女達1人ずつにセクシーダンスを披露させて、闇の支配者を悦ばせていた。そこへ善良な男女カップルが自動車事故で偶然迷いこんでしまって…みたいな話なのであるが、最終的に映画のストーリーが5ミリくらいしか進展しないまま映画は終わるという破格の作品。マジだぜ!
男はつらいよ、というか観客がつらいよ!家族を想うとき、というか時間の無駄を想うとき!

"面白くない"と一口に言っても、だう面白くないんだ?という話なのであるが、基本的に何もかもが冗長的な上に、盛り上がりシーンがゼロ、という感じ。
登場人物達の動作は非常にゆっくりしているし、ストーリーの進み具合も亀🐢。美女達のダンスも無駄に長い。出演者のぽかんとした顔が何となく映されたりもあった。
遅くとも長くとも、盛り上がりや急展開があれば問題無ささうだけれど、猫の額ほどの盛り上がりも急展開も無く、延々とのっぺりしたシーンがダラダラ続く。
美女達のダンスなんて、美女1人1人が「炎の踊り」とか「スペイン仕込み」とか「奴隷女」とかそれぞれ独特のバックグラウンドを持った設定になっていて、衣装もそれっぽいのを着て、音楽もそれっぽいのが流れるのであるが、みんな珍妙なヘンテコダンスをするだけ。踊りのスキルの問題なのか、基本的にみんなダンスの引き出しが乏しいらしく振り付けのバリエーションが非常に少ない。同じやうな動作をひたすら繰り返しているだけ。
音楽がジャジャン♪みたいになり、「あ、終わったか?」と思った瞬間、ジャジャジャ~♪とまだ続くとわかったときのプチ苛立ちが上映中100回くらいあった。
肝心の衣装も全員すぐに脱いで素っ裸のTバック一丁になってパイ乙をブルンブルンさせるだけなので、飽きるなという方が難しい。日頃、「あぁ、おっぱい好きだなぁ」と常時思っている自分でも楽しめなかった。
美女達のダンスを観ていて、日本テレビ「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」の有名キャラクター"板尾の嫁"のダンスを思い出した人、案外いるんじゃないだらうか。
しかし、とは言うものの!登場する美女達は本当にみんな美女で、しかもスタイル抜群のデカパイーズ・エンジェルで(死霊だからデヴィル?)、エド・ウッドは美人を見る目は確かだったやうである。

本作、凄まじいのは演じている人みんなが、ふざけていない所であらう。みんな馬鹿馬鹿しいと思っていたのかだうかはわからないけれど、とりあえず観ている分にはさういう手を抜いたやうなナメたシーンは無かった。(演技が大根とかはまた別問題で)

本作の苦痛ぶりは体験しないとわからないであらう。お金を払う価値はある、とはっきり言えない辛さ。
序盤こそ、我々観客(ほぼ満席)もヘラヘラ笑ったりしていたが、地獄の退屈さが90分も続くと、流石に終盤、虫の息が聞こえてきさうなほどの静寂が劇場内に広がっていた。誰1人口にしなかったけれど、恐らく我々観客全員同じことを思っていたであらう。

我々観客「(早く終わってくれ…)」

上映終了後、観客席からどこからともなく拍手が起きたが、パチ…パチ…パチ…という申し訳程度のまばらな感じで、聞いていて余計ゲンナリするやうな拍手の起き方だった。(終わってくれてありがとう…)の感謝の意を込めた観客瀕死の拍手だったのかもしれない。
しかし、「こんなもん映画じゃねえ!」という怒りは不思議と湧き起こらず、あくまでも「つまんねえ映画だったなぁ…」という感想で、しっかり本作は"映画"としてみんなに認識されていると思う。"映画"とは一体なんなのか、という深遠な疑問に一石投じるやうな側面を持っている作品の気がした(適当)。


上映前に江戸木純氏(名前の由来エド・ウッドかい!)と翻訳コンニャク家の松浦美奈氏のトークショーがあった。このトークショーがめちゃんこ面白かった!(肝心の本作は面白くなかった!)
翻訳って時代時代で全然違うとかアメリカンニューシネマ以降台詞って減ったけど、近年の映画では台詞は増加傾向にあるとか40年代のコメディは台詞数が凄まじく多いとか興味深かった。
昔、良いとされていた字幕は"2回読める字幕"とかもなるほどという感じだった。字幕って洋画見る時、無条件に信じているけど、考えてみたら映画に感動したりするかだうかの重要なパートな訳で、結構考えさせられた。

「死霊の盆踊り」。内容的には"盆踊り"では無く、シンプルに"踊り"だと思う。死霊の踊り。しかし、この"盆"という一文字が本作を的確に印象付けていると感服いたしました。

霊三毛 心の一句
「ちゃんねえが 墓場に一杯 いるわけねえ」
(季語:墓場→暗い→冬)
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