愛鳥家ハチ

死霊の盆踊りの愛鳥家ハチのレビュー・感想・評価

死霊の盆踊り(1965年製作の映画)
1.0
ハリウッドの誇る奇才、エド・ウッド監督が脚本を手掛けた伝説的作品。HDリマスター版を劇場鑑賞。ストーリーはシンプルで、墓場に囚われたカップルが死霊たちの舞い踊る姿を延々と見せつけられるというもの。
 以下、所感を述べます。

ーー墓場かな?
 まず、名作が名作と呼ばれる理由を真に理解するためには、"迷作"とされる映画を咀嚼することもまた必要である…そう自分に強く言い聞かせながら、半ば気の迷いで映画館に足を運びました。上映開始後、さながら場内は墓場の様相を帯び、"座席"という名の石柱に、"鑑賞料金"の鎖を巻き付けられた状態での鑑賞を強いられることに。身動きの取れない作中のカップルに、自身の姿を重ねた観客の方も多かったのではないかと推察します。

ーーだれでもみれます
 また、ペールオレンジ(かつての"肌色")が映える不穏なポスターとは裏腹に、本作は全年齢対象のG指定とされています。つまり、全ての観客("G"eneral audience)に門戸が開かれているわけです。HDリマスターにより鮮やかに復活を遂げた死霊たちが"淑やかに"踊り狂う様を眺めながら、倫理的にG指定で本当に大丈夫なのかと余計な心配をしてしまいました(さては映倫さん、中身を見ずに審査しましたね??!)。

ーー迷作の磁力
 それはさておき、忙しい最中になぜ本作を鑑賞したのか、何がそうさせたのか、答えは未だに分かりませんが、迷作には人を惹きつける引力ないし"磁力"が備わっているというのが暫定的な結論です。名作がS極として、迷作はN極とするならば、さしずめ"S"は"Supreme(極上)"であり、"N"は"Nonsense(ナンセンス)"の略となりましょうか。世にチャップリン作品が輝くように、迷作である本作が生まれるのも、映画界という磁場からして物理的に必然だったのかもしれません。

ーー迷作零年
 Filmarksのスコア下限は"1"ですが、"0"から刻めるようにして欲しいとこれ程までに思わせてくれる作品はありません。可能であれば、文句なく"0"を付けたいと思います(言うまでもなく至上の賛辞です)。ゼロから始まる映画の宇宙、『死霊の盆踊り』は迷作のビッグバン的作品でした。

ーー総評
 一周も二周も回って、忍耐力を高める精神修養の一環として鑑賞するのはアリだと思います。いずれにせよ、世に出た映画は全て吸収したいという"映画の求道者"向けの作品と言って差し支えないでしょう。
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