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エンド・オブ・オール・ウォーズのmhのレビュー・感想・評価

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泰緬鉄道建設捕虜虐待事件がモチーフ。
結局のところこの手の映画は「いいやつがいるからいい、悪いやつがいるから悪い」というところに帰結してしまうのはある程度しかたないことかもしれない。
日本軍側に残酷補正と、イギリス軍側にジャスティス補正がうっすら乗ってるような気がするも、終始バランスのいい作り。
泰緬鉄道建設捕虜虐待事件以外に、カンチャナブリ捕虜収容所で尋問という名の虐待が行われていたのは事実みたいで、序盤はその描写もたっぷりある。
収容所内の生活が軌道に乗ったあたりの中盤が面白い。邦画「南の島に雪が降る」みたいなことをイギリス兵たちもやっていた。授業を開いたり、音楽会を開いたりすることに生きる希望をみいだしている。
日本兵とイギリス兵の間に芽生えた奇妙な連帯感も描いている。
ラストエピソードが特にすごかった。
「死は鴻毛よりも輕しと覺悟せよ」という軍人勅諭の一文に、太平洋戦争の本質を詰め込んだ見事なシークエンス。
戦争の激化も、虐待事件のメカニズムも、日本人が命を安く見た結果だったのだ。見事看破されてぐうの音もでなかった。
泰緬鉄道建設捕虜虐待事件はイギリス、オーストラリアではかなり大きな出来事としてとらえられているとのこと。
アジア人差別という大前提があることに加えて、大航海時代から続いた植民地支配を正当化するという文脈にこの出来事が消費されてるように思う。
のちに贖罪の日々をおくることになる通訳の永瀬さんが、こちらの映画ではいい役になっていた。「レイルウェイ 運命の旅路(2013)」は、故人になってる永瀬さんを貶めるようなシーンが多く理解に苦しんでいたのだけど、こちらはいいね!

余談。
序盤に「捨て鉢になってるわけじゃない」というような意味で、「神風じゃない」というセリフがある。作中では1942年の設定。神風特攻隊が産声をあげたのは1944年10月。聞こえてくる日本語にへんなところがひとつもないし、シャベルのことを帝国陸軍のみで通じる呼称「エンピ」といっていたり、考証しっかりしてる映画なのに、なんでここだけ甘くなってんのか不思議。
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