真田ピロシキ

大統領の陰謀の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

大統領の陰謀(1976年製作の映画)
3.4
『ペンタゴン・ペーパーズ』を見た人ならそのまま続編感覚で見始められる。しかし硬さは『ペンタゴン・ペーパーズ』よりずっと上。情緒性に走らずストイックなまでに事件を追い求める2人の記者の地道な姿が描かれる。ある程度ウォーターゲート事件の関連人物について知っているのが望ましくて、ニクソンが最終的に大統領を辞任した程度の知識だとやや追うのが厳しい。自分は詳しくないのでやや注意散漫になっていたが、政治サスペンスとしてのヒヤリとした演出はディープスロートとの会話だったり、レッドフォードとホフマンが乗った暗いエレベーターや俯瞰カットなどに表れていて引き戻される。ラストの高速タイプは特に良い。ジャーナリズムの戦いそして勝利を宣言する。『キャプテンアメリカ ウィンターソルジャー』の下敷きの一つにされている映画なのでマーベル映画ファンは見て損はない。「何でロバート・レッドフォードがアメコミヒーロー映画に?」という疑問を晴らしてくれる。

本作も『ペンタゴン・ペーパーズ』同様に現在我が国で起きてる権力者の専横を想起せずにはいられない。1新聞を敵だと認定して憚らない態度がそうだし、再選確実な状況でスキャンダルをぶち抜いたのが同じで本当に今の事態は一体何なんだよ。ミスしたこともあり結局ニクソンの再選は果たされてしまったが、それでも粘り強く追求し続けたことで政界の膿と膿の親を倒したのは現実への救い。それと誤報は本当に信用に関わるのでネット上でよく見かける「なんでマスコミはこれを報道しないんだ」という意見への回答として納得が行く。センセーショナルさばかりを優先するより地道な事実の積み重ねが重要。映画に派手さがないのはそんな報道倫理を真摯に伝えようとしたからと言える。

ニクソン辞任から2年も経たずに本作を公開したアメリカ映画の仕事の速さにはいつもながら驚かされる。