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プレシャスのmasayaanのレビュー・感想・評価

プレシャス(2009年製作の映画)
4.4
※ブログにもアップしてます。
http://cinemaguide.hatenablog.com/entry/precious

貧困、家庭内暴力、近親相姦、性虐待、望まぬ妊娠――「夢」の中では既にビヨンセばりのスターとして歌手・女優業等で世界的な成功を収めている17歳の女の子、プレシャスの「現実」はかくも厳しい。観方によっては倒錯した悲惨趣味(世にいう「胸糞系」というやつ、嫌いな言葉ですが)にも思えるドキュメント性でもって、それらの底辺生活は強い筆圧で、しかしどこか淡々と綴られる。

今の生活水準が親から子へ、そして孫・ひ孫まで受け継がれていくいわゆる「格差の固定化」というのは、ここ日本でも「子供の貧困」として社会問題化して久しいですが、安全に眠れる場所と食事(=最低限度の生活)がどうにか確保されれば、次に死守すべきは「教育」だという点で、非常に真面目な書きぶりの映画だということができよう。

彼女にとってのセーフティーネットとなるのは、おそらくはNPO法人などが運営する中退者向けのフリースクールなのだが、その女教師役として出ているポーラ・パットンが素晴らしい。いわゆる「サバサバ系」の女性を演じており、慈善事業に従事する人に期待されそうな「意識高い/エモい」人物像からはかけ離れたリアリスティックな態度でありながら、同時に、勝負どころでは誰よりも味方でいてくれるという粋な役柄をクールに演じている。

why me? why me? why me???

「なぜ私ばかりこんな目に」、というプレシャスの呪いの言葉は、あまりに切ない。生まれた環境がある一定の範囲でその人の人生を決定してしまうという現実をハードに受け入れつつ、しかし、本人の意思による可能性を捨て去りはしないこの映画で、やがて「現状から脱したい」という切なる願いがプレシャスに宿り、映画の最後では誇らしいまでの炎を咲かせている。

ドラマ映画の王道をぶち抜く屈強なガールズ・ムービー。支持。