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プレシャスのEditingTellUsのレビュー・感想・評価

プレシャス(2009年製作の映画)
4.3
アカデミー賞、サンダンス映画祭の数多くの部門でノミネート、受賞したリー・ダニエルズ監督の作品。

マーティンスコセッシを感じさせるような、ドラマをこの109分の中身似たような感覚になりました。作品のテーマはもちろん監督としてのテイスト、映画をどのように観客に見せるかという視点が、1980年代を彷彿させるような美しくかつ、力強い作品。

ディヒュージョンを使ったライティングは、”JFK”のように歴史を感じさせるものとは違った、そのライティング自体で、この映画の設定、ストーリー、テーマそしてキャラクターをも表現するようなものでした。
具体的にいうと、コントラストの強さは、黒人社会という設定に加えて、ハイライトの力強さがプレシャスの成長、未来そして、EACH ONE TEACH ONEのクラスメイトの笑顔をサポートするようなライティングが見えました。

そして、編集。これが一番、マーティンスコセッシを感じたところです。むしろ、セルマ・スクーンメーカーのような編集。
それは、どんな編集かというと、キャラクターを第一優先にした編集。編集のリズム、各クリップの長さ、カットの伸ばし方、トランジションの選択を使って、そのキャラクターを作り上げていく。まさに監督並みの力を持つ編集者の技術。
たとえ、コンティニュイティが繋がっていなくてもいい。そこよりも、キャラクターをリッチに描くこと、キャラクターの感情をまっすぐ太く伝えることを一番重要視する編集です。
これの何が凄いかっていうと、実際に映画を観てみればわかると思うのですが、フッテージ自体の画の美しさだったり、演技の力強さだけじゃなく、ショットが移り変わるカットのところでストーリーが前に進み、感情が伝わってきて、心が動くというところです。

リズム感、全体を通してのアーク、そして一つ一つのフレームの細かさまで、荒っぽさをあえて表現するようなテクニックまで編集の力120%でした!

編集者というのは、一人で力を発揮することができるものではありません。監督とのコンビというのがとても大切。監督とどれだけビジョンを共有できるのか、そして監督の伝えたいことをどれだけ自分の中に落として、フィルターを通して味付けをして提供できるかということが大事になってきます。
だから、編集者の名前は監督と同じぐらい大事。
いわば、編集者が悪ければ監督が良くてもいい作品はできない。逆も然り。
さらには、どちらも天才でも、ビジョンが共有できてなければそれも駄作になる。
それほど映画というのは繊細かつ強力なもの。
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